「のり」が「はさみ」を連れてくる ~植物細胞のユニークな微小管形成の仕組みを解明~

研究成果 2021/06/17

のり」が「はさみ」を連れてくる
植物細胞のユニークな微小管形成の仕組みを解明

【発表のポイント】

  • 動植物で保存されている細胞因子が植物細胞では保存機能に加えて新たな機能を獲得している
  • 微小管細胞ポリマーを細胞内特定箇所に繋ぎとめる「のり」分子が、植物細胞ではその箇所を切断する「はさみ」分子を連れてくる
  • 「のり」と「はさみ」の共同作業により細胞内環境に適応した微小管パターンの形成が可能となる

【概要】

 奈良先端科学技術大学院大学(学長:塩﨑一裕)先端科学技術研究科バイオサイエンス領域の橋本隆教授の研究グループは、名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所の中村匡良特任講師らの研究グループらと共同で、動物や酵母では生体ポリマーである微小管を微小管形成中心注1)につなぎ留める「Msd1-Wdr8複合体」が、微小管形成中心を持たない植物では独自の機能を持つことを明らかにしました。

 細胞骨格の一つである微小管は、細胞内でポリマー状の構造をしており、その配向パターンを変化させることで、染色体の分離や細胞極性の制御、細胞の形態形成など、生物の生存に不可欠な活動を担っています。植物では、高度に組織化された表層微小管注2)の配向パターンが、成長過程や環境シグナルに応じてダイナミックに変化し、変動する細胞内外の環境に適応しています。植物の表層微小管のパターン形成には、微小管の形成と切断が重要であると考えられています。特に、微小管切断タンパク質カタニン(日本刀から命名)が微小管形成開始点部位を特異的かつ効率的に切断することにより、新たに形成された娘微小管を細胞表層に遊離し、微小管同士の相互作用を促すことが、微小管のパターン形成に必須です。しかしながら、微小管形成部位にカタニン切断因子がリクルートされる分子機構は長らく不明でした。

 本研究により、新規微小管をその生成部位にとどめておく「のり」分子が新規娘微小管を基部で切断する「はさみ」分子を連れてくるという相反する作用を持つことが明らかになりました。「のり」がない変異細胞では「はさみ」が連れてこられないので、「はさみ」による微小管切断は起こりませんが、「のり」がないことにより娘微小管形成基部の構造が不安定になり、時間がたつと自然に娘微小管がはがれてきます。「のり」分子があっても、なくても、最終的には娘微小管ははがれてゆきますので、「のり」分子は一見無駄な働きをしているように見えます。しかし、「のり」分子の2つの機能により、微小管切断が成長過程や環境シグナルに応じて高度に制御可能になります。この成果は、植物の形作りを制御する微小管の配向パターンの形成メカニズムの解明に繋がる重要な発見です。今後、この知見を発展させ、細胞骨格ネットワークを人為的に制御することで、細胞形態を改変し、環境応答効率を向上させる技術の開発が期待されます。

 この研究成果は、日本時間2021年6月17日(木)付で英国科学誌「Nature Communications」に掲載されました。

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問い合わせ先

研究に関すること>

 奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 バオサイエンス領域
 植物細胞機能研究室 教授 橋本 隆
 TEL:0743-72-5520  FAX:0743-72-0743-72-5529
 E-mail hasimoto@bs.naist.jp
 研究室ホームページ:https://bsw3.naist.jp/umeda/

報道に関すること
 奈良先端科学技術大学院大学 企画総務課 渉外企画係
 TEL:0743-72-5063  FAX:0743-72-5011 
 E-mail:s-kikaku[at]ad.naist.jp

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