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研究者紹介 vol.7 物質創成科学研究科 情報機能素子科学研究室(浦岡研)藤井茉美 助教

2012年奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学研究科修了。博士(工学)。専門は半導体物理。主に酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタの研究に従事。2016年11月から2017年4月まで育休を取得。

なぜ研究者になったのか

私には会社勤めの経験があります。工業高等専門学校5年生の時、会社の内定をもらってから卒業研究に取り組むことになっていたので、研究の面白さを知らないままに就職活動をしました。しかし、卒業研究中、自分で新しいものをつくるということに魅了され、将来は研究者になりたいと思いました。
また、高専5年の夏に研究室から2週間休みを貰って、ニュージーランドへホームステイに行きました。この間に、それぞれ目標を持って学んでいるいろんな国の学生と交流したことがきっかけで、もっと大学で学びたいと思うようになりました。この時期に、新しいものを創造する難しさ、挫折しながらも何かを達成した時の楽しさや新しいことを学ぶ嬉しさを経験したことが、私の貴重な財産になっていると思います。そこで、入社後研究者志望であることを上司に相談し、技術職として製品開発に携わりながら受験勉強をして進学しなおしました。上司にも恵まれていましたが周りの先輩方の応援もあり、途中で諦めるわけにはいかないという思いがありました。

家事育児とキャリアアップの両立

昨年初めての出産をして、0歳の娘がいます。慣れないことばかりで、育児と仕事のバランスをとるために試行錯誤の毎日です。しかし幸いなことに、上司を含め理解して応援してくださる方が周囲に多くいて、ゼミや打合せを5時以降に入れないよう気遣ってくれます。そのような雰囲気が学生にも伝わるようで、遅い時間の用事は滅多に入らないので、周囲のサポートに感謝しています。また、夫も同じ大学の教員なので,一緒に育児ができて助かっています。
私は朝6時くらいに起きて、娘の世話と朝食準備や洗濯などの家事をします。7時半頃に夫が娘を保育園へ送ってくれますので、私は身支度をして8時前に出勤します。お昼は徒歩5分の場所にある職員宿舎に戻って昼食を作り、夫と一緒に食べて、研究室に戻ります。夕方は6時までに娘を迎えに行き、夫が娘をお風呂に入れている間に夕飯を作ります。娘はとても良い子で,食事後は早々に寝てくれるので、その後家事をして、終わったら自宅で出来る程度の仕事をします。時々、思わぬ時間に装置の警報などで呼び出される事がありますが、宿舎があるおかげですぐに対応に行けるので、早い時間に帰宅しても大きな不都合はありません。
任期のうち丁度半ばに出産したので、半年も育休をいただけて、問題なく保育所を確保できましたし、これから任期内に成果を積み上げる時間があることは幸運でした。自分の価値を上げるために出来得る限り努力を重ね、自分にしかできない事を作っていきたいと思います。

ライフイベントを支える制度と環境 ―企業と大学

妊娠・出産の前後より、遠隔会議システムやアカデミックアシスタント制度、休憩室の利用など、大学のサポート制度を多々利用させていただいています。このような女性のライフイベントに関する制度や環境については、大学よりも企業のほうが充実しているかもしれません。会社員時代は、私より前の世代が既に道を切り拓いてくれていたと感じました。これは、一部の企業に限られることかもしれませんが、女性の執行役員も既におられて色んな制度ができあがっていました。実際に各制度の利用歴も多く、周囲の理解を得られやすいため、仕事とプライベートの両立がしやすい環境でした。大学においても、ダイバーシティに配慮した取り組みに関しては、周囲の意識改革が必要だと感じます。

研究分野のイメージと女性 ―これから研究者を目指す人へ

女性という性別をもつことが研究のうえで壁になったと感じたことは、これまでは特にありませんでした。壁かどうかというのは、個人の感じ方次第ではないかと思います。私の研究分野では危険な試薬や高圧ガスを使用して実験をすることが多いのですが、21歳で研究者になると決めたとき、迷いがあったかというと全くそんなことはありませんでした。自分で選んだことでしたので、それ以降に後悔したこともないです。もちろん女性の人生設計上のリスクはあると思いますが、今でも実験をすることが楽しくて、集中して実験をすることがストレス発散の手段になっているぐらいです。でも、会社員だった時に所属したチームには200人のメンバーがいましたが女性は私だけでした。それくらいこの分野には女性が少ない。私たちの分野は、女性にとってあまりよいイメージがないのでしょうか。

私たちの場合、実験室に微細なごみを持ち込まないように目しか出ていない真っ白なクリーンスーツを着て実験をしますので、おしゃれをしたい女性には嫌がられそうですね。また、大きな真空装置を使うのでメンテナンスの時には力仕事も多いです。真空装置の分解・組立をするメンテナンスは、装置の仕組みを実際に見て学ぶことができるので楽しい作業の一つですが、女性向きとは言えないかもしれません。でも、そういう環境だからこそ女性の視点が生きてくることもあると思います。周りと同じことをする必要はありませんので、自分の特徴を生かして自分にしか出来ないことを見つけるのが大事です。これから研究者を目指す人には、イメージにとらわれずにいろんなことに興味をもって、リスクを恐れず挑戦してもらいたいと思います。

(平成29年6月)

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