本学は、令和4(2022)年10月1日(土曜日)、奈良春日野国際フォーラム 甍の能楽ホールで「創立30周年記念式典及び記念講演会」を開催しました。当初は、令和3(2021)年10月2日(土曜日)の開催を予定していましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、1年延期したものです。当日は、文部科学大臣(代理)、地元選出の国会議員、内閣府、近隣自治体、関西経済界、全国の高等教育機関及び本学名誉教授等にご臨席いただきました。

 記念式典では、塩﨑 一裕 学長から、式辞で関係各位への謝意を述べた上で、「30周年の節目に策定した学長ビジョン2030は、「共創 co-creation」の輪をさらに地域、社会、そして世界へと広げることで、奈良先端大がこれからも日本や世界の未来の創造に貢献するための進化を続けることを目指すものです。」との決意が述べられました(学長の式辞全文は下記に掲載)。

 続いて、永岡桂子文部科学大臣(代読)、高市早苗経済安全保障担当大臣・内閣府特命担当大臣、奥野信亮衆議院議員、荒井正吾奈良県知事(代読)及び松尾泰樹内閣府科学技術・イノベーション推進事務局長から、本学のさらなる発展への期待を込めたご祝辞をいただきました。

 また、催物では、茂山狂言会による演目「蝸牛」が披露され、出席者に楽しんでいただきました。

 式典後の記念講演会では、橋村公英 華厳宗管長・東大寺別当を講師に迎え、「東大寺をめぐる伝承の魅力」と題してご講演いただきました。本学は、東大寺の協力の下、2012年にVR(仮想現実)を用いて現存しない堂塔伽藍を再現し、東大寺境内を体験できるプロジェクトを試みました。

【塩﨑一裕学長式辞】

 ここに、奈良先端科学技術大学院大学 創立30周年記念式典を挙行できますことは、本学の教職員、学生、同窓生にとって誠に喜ばしいことであります。本式典は、昨年より新型コロナウイルス感染症拡大のため延期となっておりましたが、本日、この美しい能楽ホールを会場に、各界を代表する多数の方々のご臨席を賜ることができましたこと、衷心より感謝申し上げます。

 また、ご祝辞を賜ります永岡桂子 文部科学大臣、高市早苗 経済安全保障担当大臣、奥野信亮 衆議院議員、荒井正吾 奈良県知事、松尾 泰樹(まつお ひろき) 内閣府科学技術・イノベーション推進事務局長の皆様方に厚く御礼申し上げます。

 1991年10月1日に本学が国立の大学院大学として設置されたこの奈良は、かつてユーラシア大陸の国々とシルクロードでつながり、国際色豊かな文化が花開いたところです。最先端の科学技術分野において高度の基礎研究を推進するとともに、優れた研究者、技術者の育成を目的として、情報科学・バイオサイエンス・物質創成科学の3分野に重点をおいた本学には、国内そして海外からも優れた人材が集まり、現在までに1,850名の博士、9,026名の修士を輩出して参りました。

 本学キャンパス近くの遊歩道には、17世紀の英国の科学者アイザック・ニュートンの銅像がございます。本学のこれまでの30年を振り返る時、ニュートンが生み出した数学の手法である微分と積分が思い浮かびます。科学技術の最先端において、次なる方向性を求め、創出するという活動は、変化を導き出す「微分」であり、30年にわたって最先端を窮め続けることで描かれてきた軌跡による成果の積み重ねを「積分」によって求めれば、そこには世界に誇るべき実績がございます。

 学部を置かない独立大学院という先導的な「実験大学」として設置された本学において、革新の連続による伝統の軌跡を描くべく、情熱を傾けてこられた歴代の学長、教職員、そして修了生の方々に敬意を表するとともに、本学の創設から今日に至るまで多大なるご支援をくださった文部科学省、国会議員の方々や、関西経済界、地元自治体の方々に改めてお礼を申し上げます。

 今、世界は、変動性・不確実性・複雑性・曖昧性に満ちたVUCAの時代にあると言われています。IT革命から始まった産業構造の激変に続き、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大、そしてウクライナ紛争の勃発など、社会・世界のあり方から個人の生活そして価値観に至るまで、地殻変動的な揺らぎが生じています。

 その中で、SDGsやニューノーマル、あるいはSociety 5.0といった私たちが取り組むべき課題や未来像は、いずれも多面的なアプローチが求められるものであり、特定の専門分野を深く掘り下げることのみで達成できるものではありません。

 本学では、2018年に情報科学・バイオサイエンス・物質創成科学の3つの研究科を統合して全学を先端科学技術研究科とすることで、分野横断的な教育研究を推進する体制を整えるとともに、新たな融合分野を創出するデータ駆動型サイエンス創造センター、デジタルグリーンイノベーションセンターを設置することで、異なった分野の研究者が総力を挙げて社会的・世界的課題に取り組むとともに、俯瞰的な視野を持ち、他分野の専門家とも協働できる人材の育成に取り組んでおります。本学が30周年を迎えた節目に策定した学長ビジョン2030は、このような「共創 co-creation」の輪をさらに地域、社会、そして世界へと広げることで、奈良先端大がこれからも日本や世界の未来の創造に貢献するための進化を続けることを目指すものです。そのために、これからも教職員が一丸となって弛まぬ挑戦を続けて参りますので、どうか引き続き皆様のご支援とご協力をいただけますよう、何卒よろしくお願いいたします。

 最後に、本日ご列席の皆様をはじめ、本学をさまざまな形でご支援くださっている全ての方々に改めて感謝申し上げ、私の式辞とさせていただきます。

2022年10月1日
奈良先端科学技術大学院大学 学長 塩﨑 一裕

記念式典の様子

記念式典で式辞を述べる塩﨑一裕学長

記念式典で祝辞を述べる伊藤学司 文部科学省 大臣官房文部科学戦略官(永岡桂子文部科学大臣 代理)

記念式典で祝辞を述べる高市早苗 経済安全保障担当大臣・内閣府特命担当大臣

記念式典で祝辞を述べる奥野信亮 衆議院議員

記念式典で祝辞を述べる村井浩 奈良県副知事(荒井正吾奈良県知事 代理)

記念式典で祝辞を述べる松尾泰樹 内閣府科学技術・イノベーション推進事務局長

茂山狂言会による狂言「蝸牛」の上演

記念講演会で講演する橋村公英 華厳宗管長・東大寺別当