NARA INSTITUTE of SCIENCE and TECHNOLOGY

学長あいさつ

Outgrow your limits. 自らの殻を破って成長を。

奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)は、1991年に創設された、最も新しい国立大学です。学部を持たず、大学院教育と先端研究に特化したユニークな大学として、科学技術研究や人材育成のあり方に変革をもたらしてきました。その先駆性と柔軟さ、そして豊かな多様性が、変化の激しい時代にあって、常に"先端"を追求し続けるNAISTの原動力となっています。

多様性が支える先端研究

NAISTでは、さまざまな大学・高等専門学校出身の学生や、社会人学生、さらに世界約50の国と地域からきた留学生が学んでいます。異なる文化や価値観に日常的に触れられるグローバルな環境が眼前にあり、自ずと視野も広がります。キャンパスでは多彩な考え方が出会い、新しい発想やイノベーションが生まれています。この多様性の高い環境こそが、先端科学技術を創造し、学ぶ土壌になるのです。

必要なのは、熱意と好奇心

NAISTが求めるのは、挑戦する熱意と旺盛な好奇心です。これまでの専攻分野にとらわれず、新しい挑戦に踏み出す勇気を持つ皆さんを歓迎します。学部から同じ大学の大学院へと進む内部進学では得がたい、分野を越えた挑戦ができるのも、大学院大学であるNAISTの魅力です。NAISTには文系出身の学生も少なくありません。例えば、経済学の知識を活かし、環境負荷の低減と経済社会を両立するバイオエコノミーの実践を考えるなど、それぞれがこれまでの学びも生かしながら「先端技術で社会をどう変えられるか」を探求しています。入学時は誰もが同じスタートラインの上。知識の差ではなく、好奇心と努力がここから先の学びを導きます。

大学全体が一つの研究科

大きな社会課題を単一の学問分野だけで解決するのは困難です。多くの分野の力を結集しなければなりません。旧来の分野間の垣根を取り払うため、NAISTは2018年に三つの研究科を統合しました。さらに、情報科学、バイオサイエンス、物質創成科学というそれまでの教育プログラムに加え、データサイエンスなどの融合プログラムを展開し、複雑化する社会課題に対応する新しい教育体系を整えています。どういった社会課題に取り組むか、科学技術をどう役立てるかをビジネスプランとして考えるアントレプレナー教育「GEIOT(ガイオット)」コースでは、専門分野の異なる学生がチームを作って新たな価値創造に取り組み、実際に起業する学生も出てきました。バックグラウンドの異なる仲間とのチームエフォートを経験することには大きな意義があり、自分の研究課題を異なった視点から見直すきっかけにもなります。

教員と学生は共同研究者

未だ到達できていない真の"先端"は教員にとっても未知の領域です。新しい発見は、教員と学生が一緒に探すものです。教員と学生は協働し、共に成果を喜ぶ共同研究者なのです。NAISTは教員1人当たりの学生数がわずか6人という比率で、密度の高い議論と研究指導を実現しています。
本学のキャリア支援室では、経験豊かなスタッフや企業出身の客員教授らが連携し、学生の個別の希望や関心事を聞きながら多彩なキャリアを選べるようサポートしています。修士修了者はもちろん、博士修了者の過半数は企業や官公庁で活躍しており、既存の枠にとらわれることなくキャリアを拡大しています。

大学の未来像を描く変革

わが国に人口減少社会が到来する中、NAISTは研究のあり方自体も変革し、研究大学の未来像を先導しています。AIやロボットを活用した実験の自動化・自律化によって24時間稼働するシステムは膨大な実験データを生み出すことができます。また、AIが提案する実験条件は研究者の常識から外れていても、思いもよらぬ成果を導くことがあるのです。NAISTでは実験記録を電子化し、データを自動で集約する電子ラボノートも導入。集約したデータをAIで解析し、活用するサイクルを構築しています。
最新の実験機器なども全学の共有設備です。「曼荼羅システム」と名付けた高速ネットワークで学内全体を結び、研究室を超えて実験結果が共有できるなど、分野を超えた研究者同士の交流が可能です。さらにNAISTの研究活動は、けいはんな学研都市(関西文化学術研究都市)に立地する研究機関、企業、スタートアップとの連携、海外の大学との交流を通し、地域や社会と深く結びつく新たなオープンイノベーションの形を作り出しています。

Outgrow your limits(自らの殻を破って成長を)

大学院の学位、特に博士号は「自ら学び続ける力」の証です。科学技術が急速に進化する現代では、常に新しい知識を求め、挑戦を繰り返す姿勢が、最前線を切り拓いていくためのカギとなります。加えて、研究には課題発見や論理的思考、コミュニケーションなど、トランスファラブルスキルとも呼ばれる多様な能力が求められます。NAISTの研究室は、こうしたトランスファラブルスキルを身につけるのに最適の場であり、ここで培った力は幅広く応用できます。そして、修了後、そのスキルを生かして何に挑戦するかは自分次第。NAISTでの研究とさまざまな出会いを通して自分の可能性を見出し、自らの殻を打ち破って自分自身の未来を切り拓いてください。

2026年4月
奈良先端科学技術大学院大学長 塩﨑 一裕