自己点検・評価書

平成20年3月
奈良先端科学技術大学院大学

目  次


基準1 大学の目的

(1)基準に関する状況

基準1-1

大学の目的が明確に定められており、その内容が、学校教育法に規定された、目的に適合するものであること。

<参考>
学校教育法(大学院の目的)
第99条 大学院は、学術の理論及び応用を教授研究し、その深奥をきわめ、又は高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培い、文化の進展に寄与することを目的とする。

新構想の大学院大学である本学は、創設準備委員会において定められた「奈良先端科学技術大学院大学の構想の概要」(資料1-1-1)を踏まえ、開学当初から学則第1条に目的として「先端科学技術分野に係る学術の理論及び応用を研究し、その深奥をきわめ、これらを教育し、科学技術の進展に寄与すること」を定めている。さらに、時代の要請を踏まえ、平成14年4月に「奈良先端科学技術大学院大学の将来へ向けて」(資料1-1-2)を評議会で策定し、目的を「最先端の研究を推進するとともに、その成果に基づく高度な教育により人材を養成し、もって科学技術の進歩及び社会の発展に寄与すること」と改正した。また、同評議会決定を第1期の中期目標に反映させ、中期計画(資料1-1-3)において、その実現のための計画を策定している。

基準1-2

目的が、大学の構成員に周知されているとともに、社会に公表されていること。

本学の目的等についてホームページ及びガイドブック等に掲載することにより大学の構成員に周知を図っている。それに加えて、学生に対しては、教育使命及び課程の教育目標(資料1-2-1)を学生募集冊子・学生ガイドブックに掲載し、周知徹底を図るとともに、入学式等においても学長が本学の目的等について説明を行い、その後の各研究科でのガイダンスでも、各研究科の教育目標・方針を説明している。

このような取組の成果を検証するために、教員及び事務職員等については平成17年度に、修了予定者については毎年度、アンケート調査を実施している。この結果、目的・理念及び中期目標・計画に対する認知度について、「知っている」とした人は、教員が75.2%、事務職員等が69.8%、修了予定者が33.6%(資料1-2-2)であるが、目的等の内容を、「詳しく知っている」又は「ある程度知っている」と回答した人は、教員 53.8% 事務職員等 39.7% 修了予定者 10.4%にとどまっている。このため、採用時及び入学時のオリエンテーション等における説明など、さらなる本学の目的等の認知度の向上を目指す必要がある。

社会に対しても、ホームページ(資料1-2-3)に掲載するとともに、ガイドブック等(資料1-2-4)を、企業関係者等に対して配布している(平成19年度実績:企業等602部/行政機関等121部/イベント参加者・来学者1,624部/その他581部)。また、学長をはじめ役員自らが東京フォーラム等各種イベントにおいても、本学の目的等について説明している。平成19年度には、広報企画会社の協力によるPR冊子の中にも本学の目的等を掲載し、広く公表(資料1-2-5)を行った。

(2)優れた点及び改善を要する点

【優れた点】

学則に規定された本学の目的に基づき、本学に対する現在の社会的要請を踏まえて、養成しようとする人材像を含め、より具体的な教育研究活動の基本的な方針を定めている。さらに、広報企画会社の協力によるPR冊子の配布やフォーラムの開催等、構成員・社会にその内容の発信の工夫を行うことにより、その積極的な周知に努めている。

【改善を要する点】

改定された大学院設置基準においては、「研究科又は専攻ごとに、人材の養成に関する目的その他の教育研究上の目的を学則等に定め、公表するものとする」とあり、時代の要請を踏まえ学則を見直す必要がある。また、教育研究の基本目標と博士前期課程・博士後期課程の具体的な教育目標を明確にし、それを受験生、学生、社会に周知する取り組みを進めているが、各種冊子やホームページ等での記載が必ずしも統一されておらず、その整理が必要である。

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基準2 教育研究組織(実施体制)

(1)基準に関する状況

基準2-1

大学の教育研究に係る基本的な組織構成(研究科及びその専攻、その他の組織並びに教養教育)の実施体制)が、大学の目的に照らして適切なものであること。

【研究科】

本学の目的を達成するため、本学が取り組むべき先端科学技術分野として、情報科学、バイオサイエンス及び物質創成科学分野を選択し、次の3研究科を置き、大学院の課程として、博士課程を置き、前期2年(博士課程前期)と後期3年(博士課程後期)の区分制をとっている。

3研究科は「第3期科学技術基本計画」で定められた重点推進4分野の内、3分野(ライフサイエンス、情報通信、ナノテクノロジー・材料)を先取りするものであり、残る環境分野とも密接に関連する教育研究活動を展開しており、本学の目的である「最先端の研究を推進するとともに、その成果に基づく高度な教育により人材を養成し、もって科学技術の進歩及び社会の発展に寄与すること」を達成する上で、適切なものになっている。

*3研究科
研究科 専攻 目的
情報科学研究科 情報処理学専攻
情報システム学専攻
情報生命科学専攻

情報科学の高度な基礎研究を推進するとともに、情報処理、通信、情報システム、情報生命等の研究開発に携わる人材を組織的に養成すること

バイオサイエンス研究科 細胞生物学専攻
分子生物学専攻
分子・細胞レベルの最先端の手法を駆使して、多様な生物現象を解明するための基礎研究を推進するとともに、生体機能、生体物質、生体情報等の活用に関する研究開発に携わる人材を組織的に養成すること
物質創成科学研究科 物質創成科学専攻 物質の構造と機能を分子・原子・電子レベルまでに立ち返って解明し、物質科学の創造的な基礎研究を推進するとともに、新機能物質の創成に携わる人材を組織的に養成すること

【附属図書館・学内共同教育研究施設・保健管理センター】

本学の教育研究組織として、3研究科に加え、附属図書館、4つの学内共同教育研究施設及び保健管理センターを設置している。

先端科学技術分野を担う本学の設置目的に従い、本学の附属図書館はデジタル化された情報をネットワークを介して24時間利用できる「電子図書館」として構築している。

学内共同教育研究施設の構成は、情報科学センター、遺伝子教育研究センター、物質科学教育研究センター及び先端科学技術研究調査センターであり、目的は以下のとおりである。

  • 情報科学センター・・・教育研究に必要な超高速ネットワークと分散処理環境を基盤とした本学の情報環境設備の運営と、先端科学技術の教育研究を支援する情報処理環境の構築。
  • 遺伝子教育研究センター・・・バイオサイエンスの最新の技術進歩に対応するため、細胞及び生体機能並びに遺伝子情報の解析における最先端の手法及び技術を積極的に導入し、独自な方法・技術を開発するための教育研究支援。
  • 物質科学教育研究センター・・・先端科学の成否を決定する重要な要素である新物質や新素材の創生に対応するため、物質科学分野の根幹的な領域に関する知識や技術の教育研究支援
  • 先端科学技術研究調査センター・・・国内外の先端科学技術分野の動向等についての研究調査を行い、本学における教育研究活動の推進に資すること。

保健管理センターでは、学生及び職員の保健管理に関する専門的業務を通じて、学生及び職員の保健の向上を図るとともに、フィジカルヘルス、メンタルヘルス及び安全に関する教育を実施している。

基準2-2

教育活動を展開する上で必要な運営体制が適切に整備され、機能していること。

【教育研究評議会・教授会】

国立大学法人法第21条に基づき教育活動に係る重要事項を審議する教育研究評議会を、各研究科に学校教育法93条に基づき教授会を設置している。教授会の審議事項については、法人化後、教授会の審議事項から人事と予算を除外し、研究科の教育研究事項の審議に専念できる体制としている。学則等に規定された、教育研究評議会及び研究科教授会の審議事項は以下のとおりである。

「教育研究評議会の審議事項」
  1. 中期目標についての意見に関する事項(経営事項を除く。)
  2. 中期計画及び年度計画に関する事項(経営事項を除く。)
  3. 学則(国立大学法人の経営に関する部分を除く。)その他の教育研究に係る重要な規則の制定又は改廃に関する事項
  4. 教員人事に関する事項
  5. 教育課程の編成に関する方針に係る事項
  6. 学生の円滑な修学等を支援するために必要な助言、指導その他の援助に関する事項
  7. 学生の入学、卒業又は課程の修了その他学生の在籍に関する方針及び学位の授与に関する方針に係る事項
  8. 教育及び研究の状況について自ら行う点検及び評価に関する事項
  9. その他国立大学の教育研究に関する重要事項
「教授会の審議事項」
  1. 教育課程の編成に関する事項
  2. 学生の入学に関する事項
  3. 学位の認定に関する事項
  4. 学生の成績に関する事項
  5. 学生団体、学生活動及び学生生活に関する事項
  6. 学生の賞罰に関する事項
  7. 研究の体制に関する事項
  8. 研究科の教育及び研究について密接に関係する学内共同教育研究施設の教育及び研究に関する事項
  9. 自己点検等に関する事項
  10. その他教育及び研究に関する事項

教育研究評議会及び教授会は原則として月1回開催することとしており、平成18年度の開催数及び主な審議事項は、資料2-2-1及び資料2-2-2のとおりである。

【全学教育委員会・教務部会等】

教育課程や教育方法等を検討する組織体制は、資料2-2-3のとおりである。

全学的な視点から教育課程や教育方法等を検討する組織として全学教育委員会を設置している。教育担当理事を委員長とし、次の事項について審議が行われている。平成18年度は、11回開催され、審議事項は資料2-2-4のとおりである。

「委員会規程 別表(全学教育委員会 審議事項)」
  1. 入試に関する事項
  2. 教務に関する事項
  3. 入学料及び授業料免除及び奨学援護に関する事項
  4. 学生宿舎に関する事項
  5. 就職支援に関する事項
  6. その他全学的な教育体制及び学生支援に関する事項

また、平成19年度は、教育担当理事の下、副研究科長及び教育担当学長補佐を構成員とする教育戦略会議を開催しており、中期目標・計画の実現や教育の国際化等の新たな課題に関する企画立案や学生募集や学生支援方策など大学が早急に取組むべき課題について検討を行っている。

さらに、各研究科において教務部会、教務委員会を設置し、教育課程・カリキュラムの編成、FD研修等、研究科の教育に関する事項について検討を行い、必要に応じて教授会あるいは全学教育委員会で審議決定する仕組みとしている。平成19年度は、新たな教育プログラムやカリキュラム、評価アンケート、講座配属、複数指導教員制度の充実などについて、検討を行った。

こうした体制の下、体系的な授業カリキュラムと組織的な研究指導を基本方針とした全学的あるいは研究科レベルでの教育への取組の結果は、3研究科とも、現在、「魅力ある大学院教育イニシアティブ」又は「大学院教育改革支援プログラム」へ採択されていることに示されるように、高く評価されている。

(2)優れた点及び改善を要する点

【優れた点】

「最先端の研究を推進するとともに、その成果に基づく高度な教育により人材を養成し、もって科学技術の進歩及び社会の発展に寄与すること」という本学の目的の下に、「第3期科学技術基本計画」で定められた重点推進4分野の教育研究をカバーできる3研究科と、その教育研究活動を支援する、附属図書館、4学内共同教育研究施設及び保健管理センターという全学センターが整備されている。

【改善を要する点】

先端科学技術分野の融合による新たな教育研究分野への挑戦として、全国に先駆け情報生命科学専攻を平成14年に設置したが、時代の要請・先端科学の進展に対応するための研究科横断型の教育研究の取り組みをさらに進め、次期中期目標・計画を展望した研究科及びその専攻の構成並びに学内共同教育研究施設等の見直しが必要な時期に来ていると考えられる。

また、学生の大学院進学意欲が低下する中、魅力ある大学院教育の提供と大学院教育の実質化、国際化が求められている現在、全学的視点から学生教育に関する方針・施策を、企画立案、審議、決定するプロセスを、機動的かつ明確にするために、教育研究評議会、教授会、全学教育委員会、教育戦略会議という諸会議の任務・権限と各会議の関係を整理し、教育の推進のための組織体制の一層の明確化が必要である。

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基準3 教員及び教育支援者

(1)基準に関する状況

基準3-1

教育課程を遂行するために必要な教員が適切に配置されていること。

【講座編制】

中期目標において「教育研究上の基本組織として、情報科学研究科、バイオサイエンス研究科及び物質創成科学研究科を置く」こととし、「最先端科学技術の基盤的研究を目指すとともに、社会的要請や研究教育の進展に適切に対応できる研究教育組織を整備する」としている。この基本方針の下、研究科に基幹講座、客員講座、連携講座及び教育連携講座を設置し、有機的に組み合わせた組織を整備している。基幹講座は、基本的に教授1、准教授1、助教2としているが,若手研究者の育成にも配慮し,准教授が主宰する講座も必要に応じて設置している。客員講座は、幅広い教育分野をカバーするために、学外の研究機関から研究者等を招聘して、教育に参画してもらっており、連携講座と教育連携講座は、学外の研究機関等と連携することにより、社会の進展や要請に応じた教育研究活動を実施している。平成19年度における編制は資料3-1-1のとおりである。

【教員の配置】

研究科における教育は、授業科目の履修及び学位論文の作成等に対する指導(以下「研究指導」という。)によって行っている。授業科目については、体系的なカリキュラムを編成しており、平成19年度は184授業科目を開講したが、そのうち、専任教員が担当した授業は89%である(資料3-1-2)。その上で、本学教員の専門分野外の先端的教育分野について、国内外の研究者等を非常勤講師として配置するほか、英語、倫理、メンタルへルス、知的財産権などについて、それぞれの分野で専門的教育あるいは経験を有する人材を、非常勤講師等として登用している。また,大学院教育の国際化に向けた施策の一つとして,海外の連携機関から教員・研究者を招聘し,英語による講義を行っている(資料3-1-3)。

平成19年10月1日現在の教員一人当たりの学生数は、資料3-1-4にあるように、5人程度である。また、各研究科の研究指導教員及び研究指導補助教員の配置状況は、資料3-1-5のとおりであり,例えば,博士前期課程の場合、情報科学研究科情報処理学専攻において大学院設置基準で求められる研究指導教員は9人に対し、本学は18人の研究指導教員を配置するほか、研究指導補助教員を17人配置している。このように学生の研究指導に必要な教員数も十分に確保されている。

【戦略的な教員の採用】

先端研究を推進するとともに、その成果に基づく高度な教育により人材を養成するためには、先端科学技術の動向と大学の将来を見据え、国内外に優秀な人材を求め、常に教員組織の活性化を図ることが必要である。このため、中期計画において、「教員選考会議を学長の下に設置し、募集する研究分野の決定及び教員の選考を行うこと」を掲げ、学長のリーダーシップの下で戦略的な教員人事を行う体制として、研究科長を責任者とする「教員選考会議」を常設し、学長・役員会の基本方針の下、年齢構成に配慮するとともに、業績及び適性に基づく人材本位の公平・公正な採用を行っており(資料3-1-6)、教授・准教授の採用は原則公募としている。

本学の教員は高い教育研究力を有しており、各年度、多くの教員が他大学の教授・准教授等に転出しており(資料3-1-7)、その後任として若手研究者を積極的に採用することができている。この結果、教員の流動性が確保されており、教員の平均年齢は国立大学法人全国平均と比べて約5歳若く(資料3-1-8)、若手教員比率45.7%と国立大学で第1位である(資料3-1-9)。平成18年度から全ての新任の助教に、原則として5年を限度とする任期を付して、自覚的な教育研究への取り組みを促すなど、流動性を高めている(資料3-1-10)。さらに、獲得した外部競争資金(例えばCOEなど)を利用して特任教員を採用し、教育研究活動および教員組織の活性化を図っている。

多様な教員を擁することが本学の一つの特徴であり、資料3-1-11の示すとおり教員の半数が企業・研究機関等の経験者となっている。また、女性教員、外国人教員の採用も、可能な場合、積極的に進めており、平成19年10月1日現在で、女性教員は、教授1名、准教授2名、助教14名の合計17名、全体の8.2%であり、外国人教員は、教授1名、助教4名の合計5名、全体の2.4%である。

基準3-2

教員の採用及び昇格等に当たって、適切な基準が定められ、それに従い適切な運用がなされていること。

【教員選考基準】

平成18年度、学校教育法の一部改正に伴う新たな教員組織(教授、准教授、助教、助手)への移行を受けて、「教員人事制度ワーキング・グループ」を設置し、本学における、教授、准教授、助教の位置づけを検討した(資料3-2-1)。その際、教員の選考基準についても検討が行われ、教授、准教授、助教は、博士の学位を有することを条件とし、① 研究実績と能力、② 教育実績と能力、③外部資金獲得実績等のその他の実績により評価を行い、選考を行うことにした。これに基づき、教員選考にあたり、研究実績と抱負、外部資金獲得実績、社会的貢献の実績等に加えて、教育実績と教育に対する抱負の提出を候補者に求めている。また、昇格についても、採用と同じ手続き・基準で行われている。

【教員評価】

教員の教育活動に関する定期的な評価としては、まず、各教員が担当した講義について、受講生による授業評価アンケートが行われている。その結果は、各研究科の教務部会等で分析が行われ、各教員にフィードバックされている。また、各年度、各講座の研究業績、研究指導実績、競争的資金の獲得実績、社会的貢献実績等のデータに基づき、各講座の自己点検評価が行われている。自己評価結果は、大学の自己点検会議で評価し、その後の大学運営に反映させることとしている。さらに、特別昇給の実施にあたり、各教員から、教育研究活動、大学運営への関与、社会的貢献等についての自己評価書の提出を求めており、給与・手当の決定に反映させている。

なお、こうした教員評価をより効率的に実施するために、平成19年度、教員の諸活動の実績を統一的に記録する業績データベースの運用を開始した。

基準3-3

教育の目的を達成するための基礎となる研究活動が行われていること。

「最先端の研究を推進するとともに、その成果に基づく高度な教育により人材を養成し、もって科学技術の進歩及び社会の発展に寄与する」という本学の目的の下、各教員は活発な研究活動を行っており、過去3年間の学術論文(査読つき)は333報/370報/396報、国際会議論文(査読つき)は274件/322件/307件、国際学会発表は197件/281件/262件である(平成16年度/平成17年度/平成18年度)。

平成18年度に開講した授業科目と担当教員の研究分野を、資料3-3-1にまとめたが、各教員が担当する授業は、各教員の研究活動と密接に関係している。特に、専門科目については、各教員の高度な研究成果を反映したものとなっている。また、講座での学生に対する研究指導とその結果としての学位論文も、各講座の研究活動に基づくものである。

基準3-4

教育課程を遂行するために必要な教育支援者の配置や教育補助者の活用が適切に行われていること。

基準11-1において詳細を記述するとおり事務職員を適切に配置している。特に学生課では、各研究科の教員の教育活動や学生の修学および生活に対する支援業務を行っており、学生・留学生係、入試係及び教務係を置き、課長以下、補佐1名、係長3名、係員7名及び派遣職員2名を配置するほか、平成19年度に、専門職員1名を配置し、教育支援に関する企画立案機能の充実を図っている。

教育研究支援部研究協力課に、研究科及びセンターの教育研究に係る技術に関する専門的業務を処理するため、技術職員21名を配置し、大型研究設備・機器、全学情報ネットワーク、大型計算機、動物舎等の施設の運転・維持・管理を行っている。また、法人化後、研修の充実を図り、高度化する研究設備・機器、情報ネットワーク及び大型計算機の維持・運転及び安全管理等に関する技術職員の専門性を高めている。

TAに関する規程を整備し、講義・演習等の補助業務に従事させ、教育の実質化を図るとともに、教育者としてのトレーニングの機会を学生に提供することを目的に、博士課程後期又は博士課程前期2年次に在籍する優秀な学生をTAとして採用している(平成18年度実績:330名(延べ人数)、9,125万円)。

(2)優れた点及び改善を要する点

【優れた点】

「最先端科学技術の基盤的研究を目指すとともに、社会的要請や研究教育の進展に適切に対応できる研究教育組織を整備する」ため、各研究科に研究科長を責任者とする常設の教員選考会議を設置し、学長のリーダーシップの下で戦略的な教員人事を行う体制が取られている。そして、優れた研究環境の下に行われる活発な教育研究活動の結果、多くの教員が他大学教授・准教授に昇任し、教員の流動性が確保されており、本学の教員の平均年齢は全国平均を比べて約5歳若く(資料3-1-8)、若手教員比率は45.7%と国立大学で第1位である。また、高度な研究成果が、学生に対する高度な専門教育に反映されている。

【改善を要する点】

平成19年度に運用を開始した教員の諸活動の実績を統一的に記録する業績データベースを積極的に活用し、教員の教育研究活動内容をより丁寧に評価し、その評価結果を教員の教育研究活動の質の向上に、より積極的にフィードバックしていくシステムを検討する必要がある。

また、大学院教育の国際化が問われている現在、外国人教員の採用にも積極的に取り組む必要がある。

なお、既存の分野の継続に拘らず、大学の将来を見据えた講座の改廃を行うとともに、若手研究者の育成に努めているが、継続的な教育研究組織の検討が必要である。

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基準4 学生の受入

(1)基準に関する状況

基準4-1

教育の目的に沿って、求める学生像や入学者選抜の基本方針が記載された入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)が明確に定められ、公表、周知されていること。

 本学の目的・理念に沿って、本学のアドミッション・ポリシーを以下のように定めている。

「大学のアドミッション・ポリシー」

国内外を問わず、また大学での専攻にとらわれず、高い基礎学力をもった学生あるいは社会で活躍中の研究者・技術者などで、将来に対する明確な目標と志、各々の研究分野に対する強い興味と意欲をもった者を積極的に受け入れる。

 各研究科のアドミッション・ポリシーも、平成14年度に教務・入試委員会(現在の全学教育委員会)において作成されたものを、平成18年度、全学教育委員会において簡潔で分かりやすい表現に整理し、教育研究評議会において、以下のように定めている。

「各研究科のアドミッション・ポリシー」

  • 情報科学研究科
    情報科学研究科では、情報・通信の科学と技術の発展や変化に柔軟に対応できる能力を身に付けるため、物事を論理的に考えることができ、また、自分の考えが的確に表現できる力をもった人を求めます。
    1. 前期課程では、旺盛な好奇心と何にでも挑戦する実行力をもった人。
    2. 後期課程では、専門テーマにおける問題の発見と解決の方策を見出す力をもった人。
  • バイオサイエンス研究科
    バイオサイエンス研究科では、次のような人を求めます。
    1. 生命現象の基本原理と生物の多様性を分子レベルおよび細胞レベルで解明することに熱意と意欲を持っている人。
    2. バイオサイエンスの深く広い専門知識を人類社会の諸問題の解決に役立たせることに強い関心を持ち、幅広い科学技術分野での活躍を志している人。
  • 物質創成科学研究科
    物質創成科学研究科では、次のような人を求めます。
    1. 物質科学や融合領域の創造的かつ先端的研究を行うことに熱意と意欲を持っている人。
    2. 人類社会の諸問題や産業界の要請に強い関心を持ち、技術革新や幅広い科学技術分野での活躍を志している人。

これらのアドミッション・ポリシーは、ホームページに掲載(資料4-1-1)するとともに、学生募集要項やガイドブック等の冊子に掲載しており、学生募集説明会等の参加者及び企業や教育研究機関やの関係者等に対し積極的に配布している。また、本学の教育目標、アドミッション・ポリシー、入学者選抜方法等を、受験者に周知するために、平成19年度は全国26箇所で入試説明会を開催している。

基準4-2

入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)に沿って適切な学生の受入が実施され、機能していること。

【入学者選抜方法】

アドミッション・ポリシーに沿って学生を受け入れるために、「本学において取り組みたい研究分野・課題等について」の小論文に基づく面接試験を主とする入学者選抜試験(資料4-2-1)を行っており、基礎学力、研究に対する意欲や潜在的な研究能力ならびに将来の進路に対する希望などを総合的に判断して、合格者を決定している。こうした、選抜方法は学生募集要項に記載し、受験者に周知している。

入学者選抜試験は、博士前期課程については年3回、博士後期課程については年2回、大学で実施しており、加えて、バイオサイエンス研究科及び物質創成科学研究科博士前期課程については、東京での入学者選抜試験も実施し、複数の受験機会を与えている。さらに、優秀でかつアドミッション・ポリシーに合致した学生を積極的に受入れるため、具体的な研究意欲を重視した選抜制度も実施している。また、全ての研究科の博士後期課程と情報科学研究科の博士前期課程については秋入学も実施している。

こうした入試制度により、他分野出身者を含め、多様なバックグラウンドを持ち、本学での学修に意欲を持つ学生が、全国から入学している。平成19年度は、博士前期課程では入学者364人中、社会人が20人、留学生が5人、飛び入学者3人、その他41人であり、文系等他分野の出身者も17人であった。博士後期課程では入学者98人中、社会人19人、留学生8人、その他8人の実績であった。

【入学者選抜の実施体制】

各年度の入学者選抜の方針は、全学教育委員会が掌握し、教育戦略会議における改善などの提案を考慮したうえで、入試説明会の実施計画、入学者選抜試験の実施計画、学生募集要項を作成している。選抜試験の実施にあたっては、各研究科における入試部会等において、基礎学力・英語試験問題の作成、面接委員の決定を行い、終了後は、面接担当者全員による評点のチェックを行った後、研究科での選考会議、教授会の議を経て合否判定を行っている。

面接試験は、実施要項等により評価基準等を面接委員間で一致させるとともに、複数の委員が各受験者の面接を行うことにより、採点の公正性を図っている。また、面接委員の決定には、担当面接委員が特定の研究分野に偏らないように考慮する、受験者の出身専攻分野や志望動機等を考慮する等、各研究科の特性を踏まえた工夫を行い、多様な学生の受験に公正に対応している。

【入学者選抜の改善】

各研究科の入試部会や教務委員会において、入試データと入学者の学力、入学後の成長度等を分析し、アドミッション・ポリシーに沿った学生を受け入れるための、より適切な入学者選抜試験の実施方法に関して、常に検討を行っている。例えば、バイオサイエンス研究科では、毎年入学時にオープニングテストを行い、入学者の知識、意欲、準備状況などを確認するとともに、入学者選抜方法の改善と入学者の動向分析のための基礎資料としている。こうした入学者選抜試験の結果の検証の結果、以下のような選抜方法の改善が各研究科で行われている。

  • TOEICの公開テストの成績から入試での英語の成績への換算の見直し(情報科学研究科)
  • 基礎知識を含めた、面接時での判断項目とそれらの基準点(ウエイト)の修正(バイオサイエンス研究科)
  • 英語の試験を口答から筆記に変更(物質創成科学研究科)

基準4-3

実入学者数が、入学定員と比較して適正な数となっていること。

博士前期課程の入学定員350人に対して、実入学者の割合(入学定員充足率)は、平成16年度100%、平成17年度102%、平成18年度106%、平成19年度104%である。博士後期課程の入学定員107人に対して、実入学者の割合(入学定員充足率)は、平成16年度109%、平成17年度102%、平成18年度99%、平成19年度92%であり、全学的には、入学定員を大幅に超える、又は大幅に下回ることはない。各研究科の実入学者数(入学定員充足率)は以下のとおりである。

博士前期課程入学定員16年度17年度18年度19年度
実入学者数入学定員充足率実入学者数入学定員充足率実入学者数入学定員充足率実入学者数入学定員充足率
大学 350 350 100% 356 102% 367 105% 364 104%
情報科学研究科 146 140 96% 152 104% 160 110% 157 108%
バイオサイエンス研究科 114 116 102% 106 93% 112 98% 110 96%
物質創成科学研究科 90 94 104% 98 109% 95 106% 97 108%
博士後期課程入学定員16年度17年度18年度19年度
実入学者数入学定員充足率実入学者数入学定員充足率実入学者数入学定員充足率実入学者数入学定員充足率
大学 107 117 109% 106 99% 97 91% 98 92%
情報科学研究科 43 51 119% 53 123% 44 102% 49 114%
バイオサイエンス研究科 34 43 126% 32 94% 27 79% 27 79%
物質創成科学研究科 30 23 77% 21 70% 26 87% 22 73%

学部を持たない本学としては、アドミッション・ポリシーに沿った学生を受け入れるために、オープンキャンパスの実施、全国における学生募集説明会、年3回の選抜試験の実施などに取組んできた。しかしながら、他大学による学生の囲い込みや景気回復による就職の好調等の影響により、年々志願者数が減少している。特に、全国的に問題となっている博士後期課程入・進学希望者の減少傾向に注意を払う必要がある。

このため、法人化後、進学相談会、推薦入試制度の導入、いつでも見学会やどこでも見学会、入試情報メールマガジンの発行((資料4-3-1)など様々な取り組みを行っている。また、博士後期課程進学意欲を引き出すために、5年一貫コースの設置、特待生に対する研究支援、TA/RA制度等を活用した経済的支援、国際学会参加の支援等の取り組みを行っている。

(2)優れた点及び改善を要する点

【優れた点】

全国での入試説明会の開催を含め、大学及び研究科のアドミッション・ポリシーの周知の取り組みが積極的に行われ、入学者選抜方法の検討も恒常的に行われており、その結果として、全国的に大学院入学者の定員割れが問題となっている中で、適正な数の学生が入学している。

【改善を要する点】

全国的に大学院への進学意欲が低下する中で、アドミッション・ポリシーに沿った学生の確保に引き続き努める必要がある。

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基準5 教育内容及び方法

(1)基準に関する状況

基準5-1

教育課程が教育の目的に照らして体系的に編成されており、その内容、水準、授与される学位名において適切であること。

【体系的な教育課程】

本学の中期目標において、教育目標を以下のように定めている。

「中期目標」

入学後、「情報科学」、「バイオサイエンス」及び「物質創成科学」の研究領域の基盤となる知識と最先端の技術を修得する講義に加え、人間として備えておくべき倫理観、広い視野、論理的な思考力、積極的な行動力、総合的な判断力、さらには豊かで実践的な言語表現力を備えた学生を育てるための教育を実施する。特に、博士後期課程の学生に対しては、世界水準の研究に取り組み、自立して遂行できる基盤となる教育を実施する。

また、中期計画においては、教育理念等に応じた教育課程を編成するための具体的方針として、以下の方針が掲げられている。

「中期計画」

こうした基本方針の下、各研究科の履修プロセスのモデル図 (資料5-1-1)及び教育課程表(資料5-1-2)に示すように、全学共通科目、一般科目、基礎科目、専門科目からなる体系的な授業カリキュラムを編成している。研究指導についても、全研究科で複数指導教員制と研究進捗状況の中間評価を実施し、組織が責任を持つ指導体制を構築している。研究と学位論文作製の指導が中心である博士後期課程についても、海外語学研修・研究研修を含む学位取得に必要な単位を設定する取組をはじめている。さらに、全研究科で、大学院教育改革支援プログラム等の競争的資金も活用して、短期留学や国際学会での発表の支援等による国際性の涵養、自主的研究プロジェクトの支援による問題発見・解決能力の育成を図っている。

本学における、教育課程の体系的編成は、全国の大学院教育の先進的モデルとして評価されており、3研究科とも大学院教育改革支援プログラム、あるいは、魅力ある大学院教育イニシアティブに採択されている。情報科学研究科については、教育カリキュラムについて、(株)三菱総合研究所および学校法人河合塾が、経済産業省の委託により開発した「産業競争力向上の観点からみた大学活動評価手法」を用いて、IT分野の学科と専攻へのアンケート調査に基づく評価結果において、 A+ランク(回答のあった全国288専攻中上位5%以内)の評価を得ている。

なお、資料5-1-1(履修プロセス概念図)に示すように、各研究科における教育課程の編成の特徴は、以下のとおりである。

  • 情報科学研究科
    • 情報科学の諸分野を網羅した専門科目群、他分野からの入学生に対する基礎科目群、情報倫理・知的財産権・MOT・英語教育・数学教育を含む一般科目群からなる体系的な授業カリキュラムを編成している。特に、「研究科の教育及び研究指導方針」で謳われている専門分野を、「計算機科学」「認識と知能」「情報ネットワーク」「システム科学」「情報生命科学」の6分野に分類し、それとの関連性を考慮して専門科目群を設置するとともに、各科目の6分野との関連度を学生に明示している。また、研究指導に関しては、複数指導教員制をとっており、中間発表を義務付けている。
  • バイオサイエンス研究科
    • アドミッション・ポリシーに基づいて選抜した多様な入学生の進路に対応するために、バイオエキスパートコース(BX)ならびにフロンティアバイオコース(FB)という2コース制を編成している。BXコースは主に前期課程修了後に企業への就職あるいはバイオサイエンス分野以外への進出を希望する学生を対象とし、学生の習熟度や進路希望によりさらに3つに細分化されたクラスを用意している。そのために、専門教育に加え、一般教育、キャリアー教育にも配慮した授業プログラムを編成している。一方、FBコースは博士号取得を目指す学生のための5年一貫制コースであり、英語教育を含めた国際性の涵養、研究能力の育成、プレゼンテーション力の向上を主眼とする教育システムを整備している。また、従来からFBコース学生については、4名以上の教員からなるアドバイザー委員を決め、委員による中間評価を各年度に実施してきたが、平成19年度から、それをBXコースにも導入した。
  • 物質創成科学研究科
    • 博士前期課程では、授業科目は「共通科目」、「一般科目」、「基礎科目」、「専門科目」、「物質科学実験・実習」、「ゼミナール」、「研究論文」より構成されており、物質科学の融合領域を担う研究者・技術者の育成を可能としている。また多様な学生の要求と社会の要請に応えるため、博士後期課程への進学希望者には、前後期課程一貫の教育を受けるαコース、ダブルメジャーを目指した複数専門分野に取り組むπコース、更に前期課程で修了する学生にはσコースが設置されている。博士後期課程では、通常の「博士研究論文」に加えて、「一般科目」である「物質科学英語上級」の聴講やTOEIC-IP受験を薦めている。また招聘講師による最先端の物質科学に関する特別講義として「物資科学特論」や「光ナノサイエンス特別講義」を開講している。博士後期課程学生及びαコース前期課程学生については、主指導教員、副指導教員に2名以上の教員を加えた、スーパーバイザーを決め、年2回の中間評価を行っている。

【授業科目・授業内容】

他研究分野の基礎教育を行い、総合的な視野を育成する全学共通科目、各研究分野について幅広い基礎知識を教育する基礎科目、英語、倫理、社会・科学観を教育する一般科目、深い専門的知識を教育する専門科目のそれぞれの教育目的・目標は、シラバス(資料5-1-3)のとおりであり、各々、教育課程の編成の趣旨に沿った授業内容になっている。

基準3-3の分析のとおり各教員は活発な研究活動を行っており、資料5-1-4に示すように、各教員が担当する授業は、各教員の研究活動と密接に関係する内容のものとなっている。特に、専門科目については、各教員の高度な研究成果を反映したものとなっている。

【学生の主体的な学習の促進】

単位の実質化に配慮し、授業による教育効果だけでなく、予習・復習等の授業時間以外の学生の主体的な学習を促すために、大学あるいは研究科として、教育方法の工夫を行うとともに、学修環境の整備を進めている。こうした取り組みも反映して、修了予定者アンケートによると「学習しやすい仕組みが整っていた」の問いに対して、そう思わない以外の回答は80.5%であり、概ね評価されている。

(1)教育方法の工夫

  • シラバスには授業の目標、内容、達成基準、教科書・参考書などを記載し、学生の主体的な学習を促している。
  • 授業担当教員によるオフィスアワーを設置し、シラバスに明記している。
  • 周辺大学、全国14工科系大学間での単位互換制度により、学生たちの主体的な学習に応えられる制度を設けている。
  • 博士後期課程学生をTAとして採用し、講義、演習において学生の相談・指導に当たるチューター制度を導入している。
  • 毎回の演習、グループ実習、ディベートのうち少なくとも一つを採用し、教育効果が上がるような工夫がなされている。
  • 特待生制度により研究プロジェクト及び国際活動を支援している(資料5-1-5)。
  • 学生の主体的な学習による準備、授業中でのプレゼンテーション、質疑応答が要求される、少人数形式による「演習」授業を実施している。

(2)学習環境

  • 学生の自主的学習環境を保障するために図書館を24 時間開館し、また、電子図書館システムを整備している。
  • 全学生への個人常用PCを貸与し、学生寮を含めたネットワーク環境を整備している。
  • 自主的な英語学習をサポートするために、オンライン英語学習システムを導入している。
  • 授業アーカイブ(授業風景とテキストが同期した授業コンテンツの作成)による自主学習の支援を行っている。
  • 専門家の常駐による英文デスクサービス(論文添削)を実施している。

基準5-2

教育課程を展開するにふさわしい授業形態、学習指導法等が整備されていること。

【多彩な授業形態・学習指導】

資料5-2-1のとおり講義、演習、実験等を組み合わせた大学院教育を展開している。また、教育効果を高めるため、様々な授業形態・学習指導が以下のように各研究科で工夫されている。さらに、全学的には、工科系大学院と連携して、インターネットを活用した他大学の講義を受講し、それを本学での学修単位として認定することにより、学生の興味・関心により幅広く応えている。

  • 情報科学研究科
    • 多くの科目で、毎回の演習、グループ実習、ディベートのうち少なくとも一つが採用されており、教育効果が上がるような工夫がなされている。
    • 少人数クラス(1テーマ数名)による実習や実験又は学外の研究機関でのインターンシップとして実験や実習を行う「プロジェクト実習」を開講している。
    • 情報倫理やベンチャー論等において少人数チームでのプラン作成やディベートを実施している。
    • 授業のアーカイブ化(授業風景とテキストが同期した授業コンテンツの作成)による、自主学習環境の整備と秋入学者の受講への活用を行っている。
  • バイオサイエンス研究科
    • 現代生物学の基本を教育する講義「現代生物学」の理解を深めるために、学生の主体的学習ならびに質疑応答による、小人数によるゼミナール形式の「演習」を実施している。
    • 学生の学力に応じたレベル別コースによる専門教育や英語教育を実施している。
    • ネットワーク学習システムを活用した英語教育を実施している。
    • TAを活用した講義・演習に関する疑問点の相談やテストの解説を行っている。
    • 企業インターンシップを含むキャリアー教育を実施している。
  • 物質創成科学研究科
    • 「物質科学実験・実習」により物質科学の基本的な実験手法を教育している。
    • 物質科学の基本を教育する講義「光ナノサイエンスコア」では、多様なバックグラウンドを持つ学生が確実に学習できるように、講義内で小人数グループ毎に助教による指導とTAによるサポートを行っている。
    • 学生の学力に応じたレベル別コースによる教育を基礎科目の一部と英語教育で行っている。
    • 少人数クラス(1テーマ数名)による物質科学実験・実習を開講している。

【シラバス】

大学の目的・理念、教育目標、それらを実現するための教育課程やシラバスが記載された学生ハンドブックを、各研究科別に、毎年更新している。学生ハンドブックは、学生及び教員に配付するとともに、シラバスは、ホームページ上で学内外から閲覧できるようにしており、学生だけでなく教員も教育目標等を踏まえ教育を行うなど活用している。情報科学研究科では、電子シラバスシステムの本格的な稼動を行っており、シラバス情報の完全電子化・一元管理化、自動組版機能、時間割・授業日程の自動生成機能を実現し、最新の情報を全学生と全教職員が常時閲覧可能となっている。

各授業科目のシラバス(資料5-2-2)には、開講学期、授業の目的、内容、履修条件、教科書・参考書、成績評価法、オフィスアワー等について様式を統一して記載しており、学生が自らの出身分野や研究内容を考慮して適切な履修計画を行うために十分な情報が提供されている。電子シラバスに掲載されている情報に対する学生の評価は、平均4.35点(1~5の段階評価で、5点満点)であり高い評価を得ている。

基準5-3

研究指導が大学院教育の目的に照らして適切に行われていること。

【研究指導の方針】

博士前期課程については、論理的な思考力、積極的な行動力、総合的な判断力を養うことを、博士後期課程については、論理的な思考力、問題発見・解決能力を養うことを目的として、資料5-3-1のとおり主指導教員の講座における研究活動を基盤として、学生に対する研究指導と学位論文作成の指導が行われている。

【講座配属と研究テーマの決定】

研究テーマ決定の基礎となる配属講座の決定に関しては、詳細は基準7-1で記載するが、各講座の研究内容を入学生全員に周知した上で、情報科学研究科では学生の希望に従って行われており、実験系であるため各講座への配属可能数の制約があるバイオサイエンス研究科及び物質創成科学研究科では、教務委員等が丁寧にアドバイスすることにより、学生が希望する分野の講座へ配属されるようにしている。

研究テーマの決定は、主指導教員の適切な指導の下に、学生の興味・希望に応えるようにしている。また、バイオサイエンス研究科では、研究を開始するにあたり、他講座教員を含む指導教員による「プロジェクト提案」科目を実施することにより、研究テーマへの理解を深める制度を導入している。

【複数指導教員制度・中間・発表評価】

学位論文に係る指導については、「複数指導教員制など、組織が責任をもつ教育指導体制を充実させる」という中期計画の基本方針の下、主指導教員による日常的な指導に加えて、複数指導教員制を活用して、他講座の教員も参加した各学生の研究進捗状況のヒアリングと学位論文作成への指導が各研究科で行われている。また、複数指導教員制度をさらに充実させ、バイオサイエンス研究科のアドバイザーコミティーや物質創成科学研究科のスーパーバイザーボード制度を導入している。さらに、物質創成科学研究科では、各講座で教育指導目標・方法を明文化(資料5-3-2)し、研究科で共有することにより、研究指導体制の向上を図っている。

研究の中間発表・評価については、情報科学研究科博士前期課程においては1回の中間発表、博士後期課程においては中間発表と学位論文公聴会が行われている。バイオサイエンス研究科博士前期課程では2回の中間発表、後期課程では3回の中間発表と、各年度に評価・指導が行われている。物質創成科学研究科では、博士後期課程学生についての中間評価を行っている。(資料5-3-3)

【TA/RA制度の活用・学会発表等の支援】

運営費交付金により、博士後期課程の学生を中心に有資格者の約半数をTAとして雇用しており、博士前期課程の授業における教育補助に従事させ、将来の教育者として必要な素養を身につけるよう指導している。また、競争的資金を用いて、海外語学・研究研修や国際学会での発表の支援も積極的に行っており、国際的に通用する研究者・技術者養成を進めている。さらに、グローバルCOEプログラム、大学院教育改革支援プログラム、魅力ある大学院教育イニシアティブ等の競争的資金を活用して、博士後期課程の学生をRAとして74名を採用(平成18年度実績)しており、研究に対する自覚を高めている。

【研究指導の成果】

研究指導の成果として、基準6で記載するとおり、博士前期課程学生・博士後期課程学生の国際会議での発表、国際的な国内外の学会への論文発表が、数多く行われている。研究指導に関する学生の評価について、修了予定者アンケートの「指導教員の教育・指導は適切だった」の問いに対する回答をみると、非常にそう思う28.2%/ややそう思う32.1%/どちらとも言えない17.9%/あまりそう思わない15.5%/まったくそう思わない6.0%であり、基本的に評価されている。また、短期修了制度を積極的に活用し、社会人学生を含め優秀な学生の早期キャリアアップを支援している(実績:平成16 ~18年度で博士前期課程26名、博士後期課程37名が短期修了)。

基準5-4

成績評価や単位認定、修了認定が適切であり、有効なものとなっていること。

【成績評価】

授業等の成績評価については、研究科履修規程に従い、講義担当教員が試験またはレポート、あるいは平常の学修活動の成績から判断して、優(80点以上)、良(70点―79点)、可(60点―69点)、不可(59点以下)の4段階評価を行い、可以上を合格とし単位認定を行っている。複数の教員が分担している授業科目は、各科目責任者を設け、責任を持った認定を行っている。

成績評価基準は、シラバスの「成績評価」の欄に評価項目及びそれらの重みを明示し、学生ハンドブックとして入学生オリエンテーションで配付するとともに、教員は、各科目の最初の講義時間に、講義の内容説明と成績評価方法を学生に周知するように努めている。

【成績評価に関する説明責任】

授業の成績評価について、その結果を研究科ホームページや掲示板等により、各講義の終了後3週間以内に受講者に知らせるほか、学生は成績証明書自動発行機により確認することができる。このことにより、学生は、常に最新の成績報告状況を知ることができ、成績評価に疑義のある場合には遅滞なく担当教員に申し出ることによって、教員は修正の必要な場合にはただちに措置を講じることができる。

また、提出されたレポートや試験答案は各担当教員が当該年度期間保管するルールを設け、成績評価に関する説明責任を果たすとともに(資料5-4-1)、筆記テストにおいては、終了後に模範解答を示すこと、レポートにおいては、添削後返却することを、それぞれ推奨し、学生の授業に関する理解度を深めている。

【修了認定・学位審査】

博士前期課程及び博士後期課程の修了認定基準及び審査方法は、学位規程(資料5-4-2)に定められており、各研究科では以下のように審査を行っている。修了認定については、学則及び研究科履修規程に基づき、教授会が行っている。

なお、学位規程並びに学位論文提出の要件(資料5-4-3)及び学位審査基準(資料5-4-4)は、学生ハンドブックに記載し、学生に対する周知を図っている。

  • 情報科学研究科
    • 修士論文については、教授会で選出された主査及び2名以上の副査の審査委員からなる審査委員会を設置する。審査委員会は、論文の精査結果、修士論文公聴会における口頭発表・質疑応答に基づき、学位授与の可否判定を行う。審査委員会の報告を、教授会で審議し、修了に必要な単位の取得を確認の上で、修了を認定する。

      博士論文については、教授会で選出された主査及び2名以上の副査で組織する審査委員会を設置する。審査委員会は、公聴会(口頭発表・質疑応答)を経て提出された論文の内容審査、公表論文等の精査を行うと共に、最終試験において博士論文提出者が独立した研究者又は技術者として研究・開発活動を続けていくために充分な素養を備えているかという観点から厳正に審査し、学位授与の可否判定を行う。審査委員会の論文審査結果と最終試験の結果に基づき、教授会で審議し、修了に必要な単位の取得を確認の上で、修了を認定する。

  • バイオサイエンス研究科
    • 修士論文については、教授会で選出された主査及び2名以上の副査の審査委員からなる審査委員会を設置する。審査委員会は、修士論文の精査ならびに、原則として教授会構成員全員が出席する修士論文発表会でのプレゼンテーションおよび質疑応答の結果に基づいて、学位授与の可否判定を行う。その結果に基づき、教授会での審議を経て修了認定を行っている。

      課程博士:博士論文については、教授会で指名された審査委員で構成される審査委員会が担当する。担当審査委員による博士論文の精査ならびに教員全員が出席する博士論文発表会でのプレゼンテーションおよび質疑応答の結果に基づいて審査される。その結果に基づき、教授会を経て修了認定を行っている。

(2)優れた点及び改善を要する点

【優れた点】

体系的な教育課程を編成し、専門科目の修得に加えて、融合領域あるいは関連他分野の知識の修得も可能にするとともに、複数指導教員制など、組織が責任をもつ教育指導体制を充実させ、各研究領域の基盤となる知識と最先端の技術の修得に加え、人間として備えておくべき倫理観、広い視野、論理的な思考力、積極的な行動力、総合的な判断力、さらには豊かで実践的な言語表現力を備えた学生を養成するという、本学の教育の基本方針に基づき、他大学院に類を見ない体系的な講義プログラムが整えられている。そして、講座における研究指導においても、本学の高い研究能力を基盤として先端的な研究テーマにチャレンジさせ、他講座の教員も含めた研究進捗状況の中間評価や海外研修・海外学会での発表の支援など、組織として責任を持つ指導・支援体制の整備が図られている。こうした教育体制は、大学院教育のモデルとして高く評価されており、全研究科が大学院教育改革支援プログラム、あるいは、魅力ある大学院教育イニシアティブに採択されており、加えて、バイオサイエンス研究科を中心にグローバルCOEプログラムにも選ばれている。

【改善を要する点】

倫理観、広い視野、論理的な思考力、積極的な行動力、総合的な判断力、豊かで実践的な言語表現力を育成するための、実効的な教育カリキュラムの一層の整備を目指している。また、大学院教育の国際化という目標も踏まえ、博士後期課程教育プログラムの全学的な整備も緊急の課題である。こうした取り組みのために、各研究科の取り組みとその成果を共有し、3研究科が連携した教育システムの改善に向けた、全学組織の設置も検討課題である。また、大学院教育における厳密な成績評価が要請されつつあり、それに対する取組も考える必要がある。

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基準6 教育の成果

(1)基準に関する状況

基準6-1

教育の目的において意図している、学生が身に付ける学力、資質・能力や養成しようとする人材像等に照らして、教育の成果や効果が上がっていること。

【教育の基本方針と教育活動の検証・評価】

本学の人材養成の目標は、「体系的な教育課程を編成し、専門科目の修得に加えて、融合領域あるいは関連他分野の知識の修得も可能にするとともに、複数指導教員制など、組織が責任をもつ教育指導体制を充実させ、各研究領域の基盤となる知識と最先端の技術の修得に加え、人間として備えておくべき倫理観、広い視野、論理的な思考力、積極的な行動力、総合的な判断力、さらには豊かで実践的な言語表現力を備えるための教育を行い、国際社会で指導的な役割を果たす研究者と社会・経済を支える高度な専門性を持った人材の養成すること」として中期目標・計画で掲げている。こうした基本方針は、学生ハンドブックに掲載しており、全教員・学生の目標として共有意識を持つことを図っている。また、大学としての基本方針の下、各研究科における教育目標及び方針を定め(資料6-1-1、2)、学生ハンドブックに記載するとともに、学生募集のための諸冊子にも記載して受験生に周知し、研究科ホームページで広く学外に公開している。

教育目標の達成状況を検証・評価するために、①授業に関する学生アンケートおよび修了予定者アンケートの実施、②講座の自己点検の実施、③修了生の数、進路、学会・論文発表数、各種受賞など教育活動結果に関する基礎データの収集を行っている。このようなデータに基づき、大学全体では教育研究評議会、全学教育委員会や評価会議等において、研究科では教授会、教務部会等やアドバイザー委員会において、教育活動の成果について検証・評価を行っている。

【教育成果】

学位授与状況
平成16年度平成17年度平成18年度
ISBSMSISBSMSISBSMS
修士授与者数 160 109 94 133 114 89 148 97 99
2年前の入学者数 161 116 104 140 116 94 155 106 98
学位授与率 99.38% 93.97% 90.38% 95.00% 98.28% 94.68% 95.48% 91.51% 100.01%
博士授与者数 35 21 17 35 20 24 50 30 17
3年前の入学者数 37 31 29 45 39 30 65 44 22
学位授与率 94.59% 67.74% 58.62% 77.78% 51.28% 80.00% 76.92% 68.18% 77.27%

(*)IS・・・情報科学研究科 BS・・・バイオサイエンス研究科 MS・・・物質創成科学研究科を示す。

大学としての3年間の学位授与率は、修士については平均95.60%、博士は平成72.38%である。修士学位授与率は非常に高い水準にあり、博士学位授与率に関しては、改善の余地はあるが、理工学系研究科としては標準あるいはそれ以上の水準にあると評価できる。また、優れた研究実績を修めた者を短期修了させており、平成16~18年度では、博士前期課程29名 博士後期課程50名に学位を授与している。

学生の学会発表等

本学の高い研究力を反映して、学位論文の内容は基本的に高い水準にあり、学位論文の内容に関して、博士前期課程学生も、多くの国内外学会で発表を行っている。博士の学位審査基準では、査読付きの学術論文や国際会議における発表を必要としており、博士学位論文の研究レベルは世界的な研究水準にあり、トップジャーナルに掲載されたものや、論文賞等を受賞したものも数多い。(資料6-1-3~4)

修了者の進路状況

平成16~18年度の博士前期課程及び博士後期課程の修了者の修了後の進路は、資料6-1-5のとおりである。

博士前期課程修了者に関しては、一定数の博士後期課程進学者を確保した上で、残る大部分を、開発部門等、企業等の専門性を要求される職種に送り出している。就職業種から分析すると食品、製薬、化学、機械、情報、出版、法律事務所と多岐にわたる。また、教師となっている者もいる。

博士後期課程修了者のほとんどが研究者として社会で活躍しており、博士後期課程修了者のうち約10%が大学教員に、約33%が企業等の研究機関、に就くほか、国内外の研究機関においてポスドク研究員として研究活動を継続している。

【学生による教育評価】

各研究科における、学生による授業評価アンケートの結果の概要は、以下のとおりである。

  • 情報科学研究科
    • 「各分野における知識を十分獲得できたか」という設問に対する回答は、平成16、17、18年度をそれぞれみると、平均して4.04, 4.11, 4.10点であった(1~5の5段階評価で、5点満点)。また、「後輩にこの授業を推薦するか」という設問への回答も、3.79, 3.90, 3.84 であり、積極的に評価されている。
  • バイオサイエンス研究科
    • 必修科目ごとに行った授業アンケートの結果、研究科の教育におけるコア授業科目「現代生物学」に対する評価は、資料6-1-6となっており、各設問に対して5又は4の高い評価を得ている。
  • 物質創成科学研究科
    • 平成18年度の授業科目に関する理解度/有益性は、一般科目 3.74/3.95、基礎科目 3.61/3.88 物質科学概論 3.40/3.40 専門科目 3.53/3.82であり、基本的に高い評価を受けている(1~5の5段階評価で、5点満点)。

また、平成18年度の修了予定者アンケート(回答者数252名)では、以下のとおりの結果であり、約7割の学生が、「研究者としての姿勢や考え方」や「専門知識・技術」を身に付けたと評価している。

非常に身に付いているやや身に付いているどちらとも言えないあまり身についていないまったく身についていない
研究者としての姿勢や考え方 12.3% 63.1% 15.9% 7.1% 1.6%
専門知識・技術 9.9% 63.1% 16.7% 9.1% 1.2%

(2)優れた点及び改善を要する点

【優れた点】

本学の高い研究力を反映して、学位論文の内容は基本的に高い水準にあり、学位論文の内容に関して、博士前期課程学生も、多くの国内外学会で発表を行っている。博士の学位審査基準では、査読付きの学術論文や国際会議における発表を必要としており、博士学位論文の研究レベルは世界的な研究水準にあり、トップジャーナルに掲載されたものや、論文賞等を受賞したものも数多い。

【改善を要する点】

大学及び各研究科の教育目標・方針は基本的には明確に定められているが、その表現がホームページ、各種冊子で必ずしも統一されておらず、その整理が必要である。大学レベルで、教育活動の成果の統計的データや授業評価結果を集約し、教育目標の達成状況を評価するための、支援体制の一層の整備も必要と考えられる。また、教育効果の検証のためには、修了生の進路状況の長期的な分析、修了生の本学の教育に対する評価の変化の分析も必要であり、修了生と本学とのネットワーク作りが求められている。

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基準7 学生支援等

(1)基準に関する状況

基準7-1

学習を進める上での履修指導が適切に行われていること。また、学生相談・助言体制等の学習支援が適切に行われていること。

【履修指導・講座配属】

多様な経歴と進路希望を持つ学生を受入れており、それに応える授業カリキュラムの編成を工夫し、学生のバックグラウンドに配慮したきめ細かな履修指導等を行っている。また、講座配属についても、丁寧なガイダンスを行っている。そして、日常的に学生に接している所属講座の教員が、受講科目の選択等、学生の学修に関して、適宜、相談に応じている。

まず、入学時の研究科別の新入生オリエンテーションにおいて、研究科の教育,研究指導方針及びシラバス等が記載された「学生ハンドブック」や、講座の概要、研究分野及び設備等が記載された「研究科概要」を配付し、学生の授業科目の選択や講座配属に役立たせている。

その上で、各研究科において学生の進路希望や学習到達度等を踏まえ、履修指導や講座配属を以下のように行っている。なお、配属後も学生の希望等により、指導教員及び教務委員会等と相談の下、講座の変更を認めるフレキシブルな体制としている。

修了予定者アンケートにおける、「研究テーマ・内容の一致度」の設問については、一致していた/31.0%、やや一致していた/32.1%、どちらとも言えない/14.7%、あまり一致していなかった/9.5%、一致していなかった/12.7%であり、基本的に現在の講座配属システムは、学生の希望を満足させるものになっている。

  • 情報科学研究科
    • 学生ハンドブックに、各授業科目がどのような研究分野と関連しているかを整理したものを記載し、学生が取り組みたい研究分野に応じた受講科目の選択のガイドラインとしている。講座配属の指導に関しては、まず、1日かけて、全講座の研究内容を各講座の教員が説明するガイダンスを開催し、その後、研究室ごとの見学・説明会も開催することにより、学生が講座を選択するための情報を提供している。そして、基本的に学生の希望に従い、配属講座を決定している。
  • バイオサイエンス研究科
    • 博士前期課程2年間での教育を目的とするバイオエキスパートコースと、後期課程も含め5年一貫の教育のためのフロンティアバイオコースの2つを設けており、各自の進路希望と入学試験及びオープニングテストの成績を参考に、教務委員が各自に面接指導を行い、コースを選択させている。講座配属は、入学直後に各講座の紹介セミナーの時間をカリキュラムに組み込み、その後、研究室ごとの見学・説明会も開催することにより、学生が講座を選択するための情報を提供している。また、フロンティアバイオコースでは、学生が3人の教員を選び、それぞれの教員の研究室を1週間ずつ体験し、研究分野や希望進路を吟味した選択が出来るよう配慮している。その上で、配属講座が、各学生の希望する研究分野に一致するように、教務委員が各自に面接指導を行いながら、最終的な決定を行っている。(資料7-1-1)
  • 物質創成科学研究科
    • 学生ハンドブックに、授業毎に教育目的と授業目標、指導方針等を明確に記載して、学生が取り組みたい研究分野に応じた受講科目の選択のガイドラインとしている。講座配属の指導に関しては、各講座の研究の基礎と概要を説明する「光ナノサイエンス概論」により、学生に各講座の研究内容を理解させるとともに、教育研究指導方針も含めた講座紹介を全講座各教員により実施することで、学生が講座を選択するための情報を提供している。その上で希望する2つの講座での「物質科学実験実習」を受けた後に、基本的に学生の希望に従い講座配属を行っている。このようにして、学生が希望している研究分野と講座の研究分野のミスマッチが起こりにくい仕組みとしている。

【学習相談・助言体制】

学生の授業に対する理解をより深めることを目的として、各授業科目にオフィスアワーを設定し、シラバス(資料7-1-2)に明記するとともに、電子メールによる学習相談を随時受け付けている。また、保健管理センター教員等の学生なんでも相談委員も実質的に学習支援に役立っている。

研究指導については、主指導教員が日常的に学生を指導するほか、全研究科で主指導教員と副指導教員による複数指導教員制(資料7-1-3)をとっており、他講座の教員から、主指導教員とは異なる視点での助言も行っている。バイサイエンス研究科及び物質創成科学研究科では、主指導教員、副指導教員にさらに複数の教員を加えた、アドバイザーコミティーあるいはスーパーバイザーボード制を導入し、複数指導教員制の充実を図っている。また、バイオサイエンス研究科では、クラス担任を配置し、講座での指導教員による指導以外に、修学や学生生活に関する様々な指導を行っている。

【学習支援に関する学生のニーズの把握】

本学は大学院大学であり、所属講座の教員が日常的に学生に接している。そうした、教員による学習支援のニーズの把握に加えて、大学としては、以下に掲げる方策を実施している。

  • 毎年度、修了予定者を対象にアンケートを実施しており、教育研究環境についての5段階評価を求めるとともに、自由記述によりニーズの把握に努めている。(資料7-1-4)
  • 講義形式の授業については、原則として、資料7-1-5のとおり受講生を対象にアンケートを実施している。結果については、担当教員にフィードバックするとともに、FD研修会で検討を行っている。
  • 各研究科では、デジタルご意見箱等として、ホームページ上で、研究科長へ直接意見等を投稿できる仕組みを構築し、学生からの研究科に対する要望を随時受け付けている(資料7-1-6)。
  • 図書館では、ホームページ上の「資料購入リクエスト」から、研究・学習活動に役立つ資料の購入リクエストを受け付けている。

このようにして把握した学生のニーズは、全学教育委員会や各研究科の教務委員会で検討を行い、必要な改善を行っている。一例として、基準7-2に述べる、オンライン型英語学習システムを、学外の連携講座等に所属する学生が学外からでも利用できるように、今年度、改善を行った。

【留学生・障害のある学生等への学習支援】

留学生に対しては、来日間もない者を対象に、教育研究について個別の課外指導を行い、学習・研究の向上を図ることを目的としたチューター制度を実施している。また、日本語の指導、日常生活における助言等を行うために、外部団体に依頼し、日本語補講を実施している。

障害のある学生に対しても必要な支援を行うことにしており、現在は在籍していないが、過去には車椅子を必要とする学生のために、講義室に車椅子が入るスペースを確保する等、教育研究環境の整備を行った。

また、情報科学研究科では、社会人学生の遠隔学習を支援するため、授業アーカイブ化(全専門科目の電子化)を進めている。

(*)チューターの配置・・・渡日後1年未満の留学生に対して、必要に応じて、本学の日本人学生をチューターとして個別に配置し、学習・研究・生活支援を実施。

基準7-2

学生の自主的学習を支援する環境が整備され、機能していること。また、学生の活動に対する支援が適切に行われていること。

【自主的学習環境の整備】

自主的な学習環境として、学生に1人1台のワークステーション又はパソコン及びデスクを供与しており、学生は、曼陀羅ネットワークを通じて、情報科学センターの計算サーバ群の利用や図書館を通して世界中の多くのジャーナルや文献の閲覧が、24時間可能である。また、学生の約6割が入居している学生宿舎にも、学内LANが整備されており、学生は、宿舎においても学習・研究に取り組める環境である。さらに、英語に関する自主的学習環境として、場所と時間を選ばすに学習できるオンライン型英語学習システムも整備している。

附属図書館は、電子図書館として、電子化された図書や雑誌及び電子ジャーナルの提供(資料7-2-1)に加えて、本学の授業等をデジタル化して蓄積する授業アーカイブ化を進めており、学生がネットワーク上で学習できる仕組みを構築し、授業に対する理解度を深めている。そのほか、閲覧スペース(32席)及び自習用机(21席)を設置し、文献複写サービス等を行っている。

講義室等も学生の自主ゼミとして活用されているほか、全研究棟の各フロアーにラウンジスペースを設け、学生がリフレッシュするとともに、自由に意見交換ができる環境を整えている。

【課外活動の支援】

大学が公認している課外活動団体はないが、サッカー、バスケットボールや茶道などの学生の自主的なサークル活動のための環境整備と支援を行い、快適な学修環境の形成を図っている。

施設面では、バレーボール・バスケットボールコート、集会室・フィットネス室(ゲストハウスせんたん)及び茶室を構内に整備するほか、奈良先端科学技術大学院大学支援財団が隣接地で管理しているグラウンド及びテニスコートも大学専用で利用できるようになっている。備品面では、学生の健康増進のための運動用具やレジャー物品を整備し、学生に貸し出している。そのほか、ソフトボール大会、駅伝大会や卓球大会などのほか、全学的な学生を巻き込んだサイエンスオリンピックや女性研究者交流企画など研究科を超えた学生の交流が自発的に行われており、大学としても運営面で協力を行っている。

また、平成19年度から、古都奈良に位置する大学の学生として、専門知識だけでなく文化や歴史を学ぶことを狙いに、奈良国立博物館等を原則無料で利用できるキャンパスメンバーズに大学として参加した。

基準7-3

学生の生活や就職、経済面での援助等に関する相談・助言、支援が適切に行われていること。

【学生の健康相談、生活相談等の体制】

学生等が心身の健康を保持し、学修に専念することを健康面から支援する体制として、保健管理センターが中心的な役割を担っている。保健管理センターに、常勤の内科医師(産業医)・看護師各1名と非常勤のカウンセラー2名・看護師1名を配置している。そして、下記の健康診断、フィジカルとメンタル面の日常診療及び健康教育を実施している。

  1. 1)健康診断:全構成員対象の一般定期健康診断に加えて、放射線、遺伝子組換え、有機溶剤、特定化学物質等の実験・研究にたずさわる構成員対象に特殊健康診断を実施している。一般定期健康診断の受検率は95.1%である。
  2. 2)日常診療(フィジカル):平成18年度、来室者数は年間4,080人、1日平均18~19名。中等度以上の疾患/病態が学生273件、教職員・非常勤職員等444件判明し、それぞれ183件、229件に治療が必要であった。
  3. 3)日常診療(メンタル):精神的/心理的相談・対応件数は、学生の7.4%、教職員の7.3%であった。
  4. 4)健康教育: HCC NEWS(保健管理センターだより)を年1回発行し、健康診断結果、疾病/病態状況を報告し、あわせて種々の病気の解説を行っている。また、学生、教職員等を対象としたフィジカルヘルス、メンタルヘルス、安全に関する講義を実施している。

また、相談窓口として、生活問題を含め、学生の様々な問題や悩みをケアするために、「学生なんでも相談室」(資料7-3-1)として、各研究科、保健管理センター、学生課に相談員を置くとともに、セクシュアル・ハラスメントに関する苦情の申出や相談に対応するため、各研究科等にセクシュアル・ハラスメント相談員(18名)を配置している。そのほか、デジタルご意見箱等として、ホームページ上で、研究科長へ直接相談できる仕組みを整備している。このような窓口体制は、入学時に学生には配付される「学生ハンドブック」や学内のホームページにより周知されている。

進路指導や就職支援として、就職支援のためのセミナーや講演会や個別面談の実施等により就職活動を支援するとともに、指導教員や専攻長や就職担当教員により密接な相談や助言が行われている。就職資料室を整備するとともに、企業就職担当経験者を「就職アドバイザー」として採用し、支援する取組をはじめている。

【生活支援等に関する学生のニーズの把握】

日常的に学生に接している教員を通した生活支援等に関する学生のニーズの把握に加えて、大学としては、生活支援に関する学生のニーズを把握するために、次に掲げる方策を実施している。

  • 毎年度、修了予定者を対象にアンケートを実施している。学内外の生活環境について5段階評価を求めるとともに、自由記述によりニーズの把握に努めている。(資料7-3-2)
  • 各研究科では、デジタルご意見箱等も生活支援等に関する学生のニーズの把握に役立っている。

このようにして把握した学生のニーズをもとに改善された事項として、近隣の都市再生機構の賃貸住宅(公団住宅)を大学が借り上げ、権利金・敷金を免除し、家賃1割引で、学生に提供するサービスを行っている。

【留学生・障害のある学生への生活支援等】

留学生に対しては、以下の支援を行っている。

  • 外国人留学生のための生活ガイドブックとして、キャンパスライフをはじめ、日本での生活習慣から医療や緊急時の対応などを記載した、「LIFE IN NARA」を発行している。(資料7-3-3)
  • 学生宿舎を、留学生に優先的に配当している(資料7-3-4)。
  • 国際連携室による支援のほか、学生課(学生・留学生係)が窓口となり、家族を含めた在留資格審査関係の申請の取次ぎ等のサービスを実施している。
  • 電子メール等による学生への通知に英文を併記している。
  • 学術振興会や民間機関からの各種奨学金の募集情報をメールで周知するととともに、ホームページで本学の留学生が受給可能な奨学金を常時掲載している。
  • 不測の事態に対する援助のために、外国人留学生等後援会を組織している。(資料7-3-5)

障害のある学生に対しても学生宿舎を優先的に配当するほか、スロープ、身障者用トイレ、エレベータ、自動ドア、身障者用駐車場を整備しているところであり、さらに今後、視覚障害者のための点字ブロック等の整備や案内板を設置する予定である。

【経済的支援】

学生が修学に専念できるように、以下に掲げる多彩で手厚い経済的な援助を行っている。

奨学金
(1)日本学生支援機構奨学金(資料7-3-6)
学業・人物ともに優秀であり、かつ経済的理由により、修学が困難であると認められるものについて、本人の出願に基づいて選考の上、推薦している。
(2)その他の奨学金
文部科学省私費留学生学習奨励費や様々な民間団体からの奨学金を活用して、経済的な支援を行っている。
入学料・授業料免除、入学料徴収猶予(資料7-3-7)

経済的理由により入学料又は授業料の納付が困難であり、かつ、学業優秀と認められる者及び入学前1年以内に、学資負担者が死亡し、又は学生若しくは学資負担者が風水害等の災害を受けたこと等により、入学料又は授業料の納付が著しく困難であると認められる者に対し、選考の上、入学料又は授業料の全額又は一部を免除している。また、入学料免除には併せて入学料徴収猶予を行っている。

学生宿舎

約6割の学生を収容できる学生宿舎(単身用寄宿費、月額5,900円)に加えて、近隣の都市再生機構の賃貸住宅(公団住宅)を大学が借り上げ、権利金・敷金を免除し、家賃1割引で、学生に提供している。

TA・RA制度

運営費交付金や、大学院教育改革支援プログラム、グローバルCOEプログラム等の競争的資金を活用して、多くの学生をTA・RAとして雇用し、教育・研究能力の育成を図るとともに、経済的支援を行っている。平成18年度の実績は、TAとしての雇用330名(延べ人数)、賃金総額9,125万円、RAとしての雇用74名、賃金総額6,048万円である。

特待生制度

「特待生の独創力を伸ばし特待生同士のつながりも重視したプロジェクト研究」や「海外の大学が主催するセミナーや国際会議への参加などの国際化活動」について授業料相当額の研究奨励金の支給、海外研修旅費の支給、プロジェクト研究のための研究費を支援している。また、学生宿舎への優先的入居を保証するとともに、日本学生支援機構(旧 日本育英会)第一種奨学生への推薦を行っている。

その他の支援

大学院教育改革支援プログラム、グローバルCOEプログラム等の競争的資金、運営費交付金、さらには、支援財団経費を活用して、学生の短期海外留学、国際学会参加を支援し、国際的に活躍できる人材育成を進めている。

以上のような施策により、特に博士後期課程学生については、支援を必要とする者に対して、TA・RA制度や授業料免除等により一人当たり平均約50万円の支援を行っている。

(2)優れた点及び改善を要する点

【優れた点】

学生に1人1台のワークステーション又はパソコンを提供しており、学生は、研究室や宿舎で24時間、計算機や電子ジャーナル等を利用可能である。また、授業のアーカイブ化やオンライン型英語学習システムなど学生が場所と時間を選ばすに自主的に学習できる、最先端の環境が整えられている。また、公私の奨学金の活用、入学料・授業料免除、学生宿舎及び公団住宅の提供、TA・RAとしての雇用等、多彩で手厚い学生の経済的支援を行っており、特に、博士後期課程学生については、支援を必要とする者に、授業料相当額の支援を行っている。

【改善を要する点】

現在、入学金・授業料免除は、国立大学時代の基準に従って行われており、他の経済的援助の状況も考慮して、大学法人としての戦略的な基準を新たに策定することが必要になっている。また、修了予定者を対象としたアンケート調査では、「学生の意見や要望を大学が把握していた」の問いに対して、非常にそう思う3.6%/ややそう思う14.3%/どちらとも言えない44.4%/あまりそう思わない22.6%/まったくそう思わない13.9%であり、自主的活動の支援と関連して、「趣味やサークルなど研究以外での交流の機会が多かった」の問いに対して、非常にそう思う4.4%/ややそう思う10.7%/どちらとも言えない13.9%/あまりそう思わない25.8%/まったくそう思わない47.6%であったとの結果であり、大学のニーズの把握に対する取組の周知と意見の反映の可視化が必要である。また、学長と学生の懇談会の開催など学生ニーズを直接把握し、双方向によるニーズの把握も検討する必要があると考れる。

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基準8 施設・設備

(1)基準に関する状況

基準8-1

大学において編成された教育研究組織及び教育課程に対応した施設・設備が整備され、有効に活用されていること。

<参考>
大学設置基準
校地面積(第37条)・・・収容定員上の学生一人当たり10㎡

【施設・設備】

本学は関西文化学術研究都市内に位置し、土地面積は137,228㎡、建物面積は98,562㎡を保有している(資料8-1-1)。生駒地区における学生一人当たりの校地面積は124.2㎡、校舎面積は56.8㎡であり、大学設置基準を満たしている。

教育研究施設としては、研究科毎に講義室、研究室、実験・実習室、演習室等からなる建物及び講堂(ミレニアムホール)、附属図書館(電子図書館)という学内共同利用施設を整備している。また、先端的教育研究活動のための学内共同利用大型設備・機器に加え、語学学習のための設備として、オンライン型英語学習システムを整備している。さらに、厚生施設として、食堂・喫茶室・売店等からなる大学会館、保健管理センター、学生も宿泊利用できる国際学術交流棟(ゲストハウスせんたん)を整備している。運動施設としては、バレーボール・バスケットボールコート、ゲストハウスせんたん内にフィットネス室を整備しているのと併せて、奈良先端科学技術大学院大学支援財団が隣接地で管理しているグラウンド及びテニスコートも大学専用で利用できるようになっている。

こうした施設の利用状況について、利用状況調査を行ったところ、日々の利用時間及び利用日数とも十分機能しており、有効に活用されている。また、大型機器等の設備についても、利用記録により、その活用状況を把握しており、有効に使用されている。

学生宿舎は、単身用559室、夫婦用50室、世帯用10室を有する8棟を整備している。各室には学内LANが整備され学生の利便性を高めているところであり、平成19年度10月1日現在の入居率は95.6%であった。

バリアフリー化への対応は、奈良県住みよい福祉のまちづくり条例に基づき整備を行っており、スロープ、身障者用トイレ、エレベータ、自動ドア、身障者用駐車場を整備しているところであるが、さらに今後、視覚障害者のための点字ブロック等の整備や案内板を設置する予定である。

【情報環境整備】

本学は、幹線10Gbps、支線1Gbps以上の超高速キャンパスネットワークを構築している。このキャンパスネットワークは、インターネットにも10Gbps の高速専用回線で接続されている(資料8-1-2)。

計算機室には、1ペタバイトを越える高信頼性大容量ファイルサーバ、テラフロップスレベルの高性能計算サーバ等が設置されている。また、学生・教職員の日々の活動のために、約 1600 台のコンピュータが研究室および各組織に設置されている。これらのシステムは部分的に毎年置き換わり、4年で全てが更新される(資料8-1-3)。また、アカウントの統一管理により、学生は同じアカウント情報でこれらのシステムを利用することができる。

キャンパス内に約 80 台のアクセスポイントを設置し、無線LANサービス(資料8-1-4)を提供している。また、学生宿舎にもネットワークが整備されており、学生はいつでもどこからでもキャンパスネットワークを利用することができる。

セキュリティについては、情報セキュリティポリシー(資料8-1-5)を制定し、ファイアウォール、侵入検知システム、脆弱性検査システムなどによりセキュリティ管理・運用をおこなっている。また、ホームページ及びガイダンスによるセキュリティ啓発活動を行っている。

【施設・設備の運用に関する方針】

学内の各施設については、設置目的や運用規程等を学内規則で定め、ホームページに掲載している。さらにこれらの施設の利用については学生ハンドブックに掲載し、新入生オリエンテーションで説明するとともに学内に配布し周知している。

主な施設の運用状況は以下のとおりとなっている。(資料8-1-6)

  • (1)附属図書館では利用規程や利用案内をホームページに掲載し、広く学内外に周知している。
  • (2)保健管理センターでは健康相談、健康診断等をホームページに掲載し、広く周知している。
  • (3)ゲストハウスせんたんでは利用案内をホームページに掲載するとともに利用者に配布している。

学内共同利用施設内の各設備の利用については安全の手引き(実験編)に掲載し、オリエンテーション等で学生に周知している。各研究科でも所属の共通利用機器について、ホームページに掲載し有効活用を図っている。

基準8-2

大学において編成された教育研究組織及び教育課程に応じて、図書、学術雑誌、視聴覚資料その他の教育研究上必要な資料が系統的に整備されていること。

附属図書館は、設立当初から我が国初の実用型電子図書館として、著作権をクリアした資料について電子化(デジタル化)して蓄積し、電子媒体として入手可能な資料とともに、ネットワークを介して利用者に提供しており、本学主催の学術講演会、授業等もデジタル化して蓄積し、ネットワークにより提供している。また、従来の物理媒体の資料の蓄積、提供も行っている。

平成18年度末の本学で電子化した資料数は、図書931冊、雑誌131タイトル140万ページ、学位論文・科研費報告書等の学内文献4,697件23.5万ページ、ビデオ資料として、学術講演会2,039件、授業アーカイブ960件となっている(資料8-2-1)。さらに、約4,200タイトルの電子ジャーナル、SciFinder等4種類のデータベースもネットワークを介して利用できる。本学の目的である最先端の教育研究活動を支援するために、最先端の学術研究情報を24時間入手可能とする、電子ジャーナルとデータベースの充実を最優先で行っており、その利用も多い。また、大学院教育のために、教科書およびシラバスに掲載されている参考図書は網羅的に収集するとともに、他の参考図書も継続的に充実させている。その他、図書45,018冊、雑誌1,004タイトルを保有している。

平成18年度の利用状況は、入館者数111,497人、図書の貸出数7,865冊、文献複写依頼3,263件、受付429件等となっている。

(2)優れた点及び改善を要する点

【優れた点】

超高速キャンパスネットワークを構築し、1ペタバイトを越える高信頼性大容量ファイルサーバ、テラフロップスレベルの高性能計算サーバ等を設置し、また、学生・教職員の日々の活動のために、約 1600 台のコンピュータが研究室および各組織に設置することにより、最先端の情報ネットワーク環境を構成員に提供している。その上で、最先端の学術研究情報を24時間入手可能とする、電子図書館システムを構築・維持している。

【改善を要する点】

視覚障害者への施設整備が課題である。

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基準9 教育の質の向上及び改善のためのシステム

(1)基準に関する状況

基準9-1

教育の状況について点検・評価し、その結果に基づいて改善・向上を図るための体制が整備され、取組が行われており、機能していること。

【教育に関するデータ収集】

教育活動の実態を表す基本的なデータとして、カリキュラム、学生の配属状況、学生個人の成績(単位認定)、研究指導状況、学位授与状況及び留年・休学・退学状況など教育活動の基礎となるデータを学生課において集約・蓄積している。集約されたデータを下に、教育研究評議会、全学教育委員会や研究科アドバイザー委員会等において教育の状況について検討が行われている。

また、毎年、データブック(資料9-1-1)を作成しており、学生数、入学状況 、修了・学位授与者数 、卒業後の動向、留学生受入の推移等をグラフ化し、適宜適切にホームページ上に更新・公表している。

【学生及び学外者の意見の聴取】

学生の意見の聴取は、「修了予定者アンケート」、「授業評価アンケート」及び「デジタルご意見箱」の方法で行われている。

「修了予定者アンケート」は、平成10年度から実施しており、修了予定者に対し、本学の総合的な評価や教育内容や教育研究環境や生活環境等の幅広い範囲について学生の意見を収集するとともに、大学が意図している教育効果の検証に活用している。法人化後、当該アンケートについて、外部の調査機関に委託し、より実態を把握しやすいアンケートの内容(資料9-1-2)とした。アンケート結果(資料9-1-3)は、役員に報告されるとともに、全学教育委員会において現状把握に利用されている。改善された事例としては、就職支援の要望に対する就職アドバイザー客員教授の採用が挙げられる。

「授業評価アンケート」は、全ての講義形式の授業科目に関して、全研究科で実施している(資料9-1-4)。授業アンケート結果は、個々の教員にフィードバックされるとともに、FD研修会において、過去のアンケート結果との比較検討を行い、授業の方法の改善やカリキュラム編成に反映させている。また、簡単な内容の中間アンケート(資料9-1-5)を行い、その後の授業の改善に迅速に役立つ取組や教員が具体的にどのような改善を行ったか調査し、効果の検証を行う取組をはじめている。

「デジタルご意見箱」は、各研究科のホームページで、研究科の教育、研究、運営に関することなど、学生が自由に研究科長に意見を届けられる仕組みである。提出された意見は、研究科長が内容を判断し、必要な改善を行っている。

そのほか、各研究科のアドバイザー委員会において、外部有識者と教育カリキュラムに関する意見交換を行うとともに、授業評価委員(学外有識者)による授業参観を取り入れ、客観的な視点からカリキュラム全体への改善提言と個々の教員の授業方法の改善指導を行うなど、学外者を活用した改善に努めている。また、講座における研究指導に関しても、自己点検の一環として状況を把握し、各講座での研究指導の充実を促進している。

【組織的な教育の質の向上のための改善】

学位授与率・就職状況等の教育活動の結果に関するデータに加えて、学生及び学外者の意見の聴取、さらには、入学者・社会の動向を踏まえ、教育課程等の改善を継続的に進めている。

大学としては、3研究科の連携による幅広い知識を学生に教授するため、平成15年度から、バイオサイエンス概論、情報科学概論を他研究科の学生を対象に開講し、平成18年度から、物質創成科学概論も開講した。さらに、平成20年度から、科学技術論・科学技術者論も全学共通科目とし、春学期に集中的に実施することにしている。また、複数研究指導員制の充実に加えて、各研究科の授業体系も継続的に見直しを進めている。その主要なものは以下のとおりである。

  • 情報科学研究科
    • 特待生制度やCICP(テーマ提案・コンテスト型実習)といったプロジェクト型教育の実施
    • 助教が主担当となる授業の導入
    • 授業アーカイブを利用した科目履修
    • 専任の外国人教員の採用により、「英語コミュニケーション法」、「英語ライディング法」及び「英語プレゼンテーション法」の少人数教育を実施
    • アウトソーシングによる英文デスクサービスの実施
    • 企業の研究現場を経験し、大学内では経験できない実践的で幅広い見識と実社会への適応性を身につけることを目的とした長期インターンシップの実施
  • バイオサイエンス研究科
    • 一律の講義に対する学生の不満も考慮し、フロンティアバイオコースとバイオエキスパートコースの2コース制を導入するとともに、コアカリキュラムに現代生物学の授業に、レベルの異なる3種類を設置し、その学修を助ける少人数制の演習を導入
    • 研究科アドバイザー委員会での意見も受け、バイオサイエンスの社会的位置づけを教育する、バイオインダストリー特論を設置
    • 専門講義の内容を見直し、より体系的なものに再編成
    • 科学技術論・科学技術者論を新設
    • 英語による教育を中心に、博士後期課程修了に必要な単位を新設
  • 物質創成科学研究科
    • 同一レベルの講義内容に対する学生の理解度に対するアンケートも考慮し、一部の科目でアドバンストコースとエレメンタリーコースの2コース制を導入
    • 学生の授業アンケート結果等を参考に、基礎科目内容を抜本的に見直し、物質科学の基礎学力を確実につけることができる光ナノサイエンスコア科目を新設するとともに、さらに専門性を考慮した光と電子、光と分子科目を新設
    • 研究発表能力や論文執筆能力の向上、科学情報プロセスの習得などを目的としたサイエンスリテラシーを新設

【教員の教授方法の改善】

毎年度、「授業評価アンケート」の結果を個々の教員にフィードバックするとともに、FD研修会における、授業評価委員の授業評価結果、授業方法に関する外部有識者の講演や、海外FD研修会の報告を参考にして、各教員が授業内容と教育方法の改善に努めることを促している。

その結果としての改善例を、以下に示す。

  • タブレットを使ったスライドへの書き込みなどプレゼンテーション方法の改善
  • ビデオやWikiなどのマルチメディアを利用した学生の授業内容理解支援
  • 中間アンケートからでた資料や進捗速度の改善要求に対する即応
  • 授業開始前に簡単な小テストを実施
  • グループディスカッションを授業中に実施
  • 授業の終わりに、内容把握を確認するための簡単な小テストを実施

基準9-2

教員、教育支援者及び教育補助者に対する研修等、その資質の向上を図るための取組が適切に行われていること。

【FDに関する取組】

ファカルティ・ディベロップメント(FD)について様々な取り組みを行っている(資料9-2-1)。

全学教育委員会の下、海外FD研修とその報告会を開催している。海外FD研修は、海外の大学の教育方法を積極的に取り入れ、教員の教育技能を高めるとともに、得られた情報を組織的な教育改善に資することを目的としている。他大学に先駆けて、平成17年度から、毎年6名程度の教員をアメリカの大学に短期間派遣し、研修プログラムを受講させており、企業等経験者又は若手教員といった教育実績が浅い教員にとって有効な研修となっている。また、参加教員は学長及び教員に研修報告を行い、本学での授業方法の改善や大学院教育の国際化に役立てている。さらに、平成19年度からは、当該研修に事務職員を参加させ、スタッフ・ディベロップメント(SD)としても活用することを始めている。

FD研修会を3研究科ごとに定期的に開催している。そこでは、学生による授業評価の分析結果の報告、授業評価委員(学外有識者)による授業参観を踏まえた提言、海外FD研修の報告などにより、授業方法・内容の改善策を議論するとともに、教育課程編成の改善についても議論を行い、教育上の課題の共通理解を進めている。また、研究指導の方法論の共有・改善を目的に研究指導FDの試みや合宿形式による集中的な議論などFD活動の充実の工夫を行っている。

【FD活動による教育の質の向上や授業の改善】

基準9-1で記載した授業の改善は、FD活動の成果とも言えるが、修了予定者アンケートでは、「授業(進め方・教え方)が良かった」という問いに対して、平成17年度は、平均3.15(5段階 5点満点)が平成18年度は、平均3.20であり、平均3.0以上の高レベルで維持し、0.05ポイント向上している。また、情報科学研究科の授業評価アンケートでは、資料9-2-2のとおり、高い水準を維持し、改善されている項目が多く、全体として、FD活動が、教育の質の向上や授業の改善に結び付いていると評価できる。

また、海外FD研修会は、授業の進め方や資料等の準備及び英語能力の向上など参加教員の教育技能の向上に役立っていることに加えて、海外の大学で積極的に活用されている教員と学生の授業中の双方向コミュニケーション機器を導入する契機となっている。

【教育支援者の資質の向上】

本学の教育支援者としては、技術職員及び事務職員が、教育補助者として、TAが該当する。

先端科学技術分野の教育研究を実施している本学において、技術職員は、大型研究設備・機器、全学情報ネットワーク、大型計算機、動物舎等の施設の運転・維持・管理を行うことが求められており、資料9-2-3のとおり、高度な専門的知識や技能習得のための研修を実施している。

事務職員については、基準11-1において詳細を記述するが、教務事務及び学生支援に関する専門性を高める取組として、学生指導、留学生支援、就職支援やメンタルヘルス等に関する研修に積極的に参加させているほか、大学院教育の国際化に向けて、国際連携室を設置し、語学力の向上や国際化に向けた企画立案を行うため、英会話研修や国際企画担当職員研修等を行っている。

TAについても、授業等担当教員により、その業務内容に関する説明・指導が行われている。

(2)優れた点及び改善を要する点

【優れた点】

学生及び学外有識者の授業評価結果に加えて、教育活動の結果に関するデータ、さらには、入学者・社会の動向を踏まえ、教育課程等の改善が継続的に進めている。また、他大学に先駆けて、海外の大学の教授方法を積極的に取り入れる海外FD研修を実施・充実するとともに、各研究科で定期的にFD研修会を実施し、多様な視点から教育内容・方法の質の向上に努めている。

【改善を要する点】

国際的に通用する大学院教育体制の構築のためにも、大学としてより一層組織的にFD活動に取り組む体制が必要である。また、TAの業務内容に関する指導について、業務に必要なマニュアルの作成や研修等について組織的に対応する必要がある。

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基準10 財務

(1)基準に関する状況

基準10-1

大学の目的を達成するために、教育研究活動を将来にわたって適切かつ安定して遂行できるだけの財務基盤を有していること。

【資産状況】

本学の平成18年度末現在における資産は、固定資産(有形固定資産、無形固定資産等)31,098,161千円、流動資産2,687,427千円、資産合計33,785,588千円を有し、また、債務は固定負債10,960,769千円、流動負債3,729,498千円、負債合計14,690,267千円である(資料10-1-1)。本学の資産は、法人化以前に管理してきた建物等については全て出資されていることから、安定した教育研究活動を遂行できる資産を十分に有している。

負債のうち、減価償却処理により費用が発生する都度、取り崩して収益化する取扱いとされる資産見返負債が2,451,607千円、奈良県土地開発公社から借り入れていた本学敷地を購入するために平成17年度末に民間金融機関から借り入れた長期借入金が固定・流動負債合計7,599,500千円となっている。このうち、長期借入金については、文部科学大臣の認可を受けた償還計画に基づき、毎年度文部科学省から予算措置される特殊要因経費で償還されるものであり、実質的な債務過大にはなっていない。なお、短期借入は行っていない。

【経常的収入】

本学は、「学部を置かない国立の大学院大学として、最先端の研究を推進するとともに、その成果に基づく高度な教育により人材を養成し、もって科学技術の進歩と社会の発展に寄与すること」を目的として教育研究活動を行っている。その活動を支えるための経常的収入としては、大きく「運営費交付金収入」、「学生納付金収入(授業料、入学金、検定料)」、「外部資金(受託研究等収入、受託事業収入、寄附金収入)」、「競争的資金(補助金等)」、「その他収入」に区分することができる。

本学の経常的収入における大きな特徴としては、学部を置かない大学院大学であるが故に「学生納付金収入(授業料、入学金、検定料)」が経常的収入全体に占める割合が小さく、その結果として経常的収入全体に対する自己収入(「学生納付金収入(授業料、入学金、検定料)」と「その他収入(学生納付金以外の自己収入)」)の占める割合が小さい点と、「外部資金(受託研究等収入、受託事業収入、寄附金収入)」が経常的収入に占める割合が大きい点である(資料10-1-2)。

本学の決算ベースでの経常的収入は、平成16年度(約91億円)、平成17年度(約93億円)、平成18年度(約95億円)と毎年度増加している(資料10-1-3)。本学では運営費交付金交付額が効率化係数(△1%)の影響により毎年約5千万円ずつ減少することとなっているため、教育研究活動を維持・発展させるためにはこれに代わる収入を確保する必要があるが、中期計画・年度計画において「外部資金獲得の推進」、「特許収入増加の推進」、「競争的資金獲得の推進(外部資金以外の補助金や特別教育研究経費)」を掲げ、国立大学法人化後の平成16年度から平成18年度までの3事業年度では積極的な取組みを行い、経常的収入を確保している。

なお、平成18年度決算ベースによる割合は、「運営費交付金収入」(約71%)、「外部資金(受託研究等収入、受託事業収入、寄附金収入)」(約18%)、「学生納付金収入(授業料、入学金、検定料)」(約7%)、「競争的資金(補助金等)」(約1%)、「その他収入」(約3%)となっている(資料10-1-4)。

平成18年度第3・四半期以降、資金運用が可能な資金である運営費交付金の支払未済額と寄附金の残高を使用し、本格的な資金運用を開始した。

運営費交付金については単年度経理のため、短期運用を図ることとし、大口定期預金による運用を実施している。寄附金については年度繰越が可能であるため、長期的運用を図ることとし、国債購入による運用を実施しているところである。

平成18年度の運用収益実績額は2,544千円、平成19年度は、9,049千円を計上した(資料10-1-5)。

基準10-2

大学の目的を達成するための活動の財務上の基礎として、適切な収支に係る計画等が策定され、履行されていること。

【収支計画等】

本学では、大学の目的に基づいて、平成16年度から平成21年度までの6年間における中期計画を作成している。この中期計画の一部として、予算、収支計画、資金計画を作成し、経営協議会、教育研究評議会及び役員会の議を経て決定したうえで、文部科学大臣に申請し、「国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学 第1期中期計画(資料10-2-1)」として認可を受けている。この中期計画は、随時見直しを図り、必要な場合には変更も行っている。

また、中期計画の達成に向けて各年度毎に年度計画を作成している。この年度計画の一部として、各年度における予算、収支計画、資金計画についても作成しており、経営協議会、教育研究評議会及び役員会の議を経て決定し、文部科学大臣に「国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学 年度計画(資料10-2-2)」として届け出ている。

これらを大学のホームページで公開しており、学生、教職員はもとより、広く学外者にも明示している。 

【収支の状況】

本学では、予算配分から決算まで財務会計システムで一元的に管理し、月次ごとに収入状況、支出状況を把握し、過大な支出超過にならないよう比較検討を行っている。これにより、収入予算に対する収入額の割合や予算配分に対する支出額の割合等から、補正予算の編成や全学的な経費の見直しを定期的に行っている。

なお、平成16年度は、決算ベースで収入が9,137百万円、支出が8,844百万円あり、収入が支出を293百万円上回っている。平成17年度は、決算ベースで収入が19,125百万円、支出が18,835百万円あり、収入が支出を290百万円上回っている。平成18年度は、決算ベースで収入が9,591百万円、支出が9,072百万円あり、収入が支出を519百万円上回っている(資料10-2-3)。

【戦略的な資源配分】

本学では、学内における予算配分に当たっては、中期計画及び年度計画を達成すべく予算編成方針を各年度毎に作成し、この予算編成方針に基づいて予算原案を作成し、予算責任者にヒアリング等を行い協議を重ねた上で、予算案を作成している。この予算案を経営協議会で審議し、役員会の議決を得たうえで、予算として決定し配分を行っている(資料10-2-4、資料10-2-5)。

この予算編成方針に記載があるように、本学では、「中期計画及び年度計画の達成」、「本学独自の教育研究の更なる活性化」に対する取組について、特に重点的に経費の配分を行っている。また、研究科長のリーダーシップの下、各研究科の独自性を発揮するための経費として、研究科長特別経費を配分している。この研究科長特別経費については、各研究科における平成17年度の間接経費獲得額の比率によって予算額を按分しインセンティブに配分している。

基準10-3

大学の財務に係る監査等が適正に実施されていること。

【財務諸表等】

本学の毎事業年度における財務諸表等については、当該事業年度の翌年度6月末に文部科学大臣に提出し、承認を受けた後、国立大学法人法により、官報公示を行い、かつ、財務諸表並びに事業報告書、決算報告書並びに監事及び会計監査人の意見を記載した書面を事務局に備え、閲覧に供するとともに、本学ホームページに掲載し、公表することとしている(資料10-3-1)。本学ホームページへの掲載に当たっては、前年度との比較表やグラフも取り入れて公表しており、適切な形で公表されている。

【会計監査】

準用通則法に従い、財務諸表、事業報告書及び決算報告書について、監事の監査及び会計監査人の監査を実施するほか(資料10-3-2 ~ 3)、内部監査規程に基づき独自に監査を行っている(資料10-3-4)。

内部監査は、内部監査規程及び内部監査実施要領を基に、監査室を設置し、年度計画を定めて会計監査を実施している(資料10-3-5)。会計監査は日常業務として会計伝票や契約関係書類の書面監査を行い会計事務の適正化に務めるとともに、定期監査として実地監査を実施し改善指導を講じている。

効果的かつ効率的な監査の実施するため、監査法人と監査室とミーティングの機会を持つことや、内部監査と監事監査の機能分担を図るなどの工夫を行い、監事監査、会計監査人の監査及び内部監査の3つが独立性を保ちながら、相互に連携を図り、それぞれの視点での遵法性・遵規性及び業務の効率性と合理性について検証している。

(2)優れた点及び改善を要する点

【優れた点】

平成19年度第2・四半期から、本学と取引を希望する金融機関をホームページ上で広く募り、事前登録制とした。これにより金融市場の動向に速やかな対応が可能となった。

【改善を要する点】

長期運用において、運用対象を国債のみとしているが、収益性と信頼性の高い政府保証債も購入対象とすることについて検討する必要がある。

職員宿舎等、老朽化した施設整備について、改築・改修のための予算確保等、将来に向けた対策が課題である。

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基準11 管理運営

(1)観点ごとの分析

基準11-1

大学の目的を達成するために必要な管理運営体制及び事務組織が整備され、機能していること。

【管理運営組織】

管理運営に関する方針として、中期目標において、「学長がリーダーシップを発揮し、遂行するため、合理的かつ機動的な管理運営体制を整備するとともに、大学の運営に幅広く学内外の意見を反映させる運営体制を構築すること」を掲げている。この方針の下、管理運営体制として、法令に定められている「役員会」、「経営協議会」及び「教育研究評議会」に加え、長期的な視点からの検討と総合調整を行う「総合企画会議」並びに教育研究活動等の状況に関する自己点検・評価の実施及び学外者による検証を行う「評価会議」を設置している(資料11-1-1)。教員人事については、学長直轄の「教員選考会議」を常設し、学長が事前にその基本方針を示し、既存の分野の継続に拘らず、大学の将来を見据えた採用分野・人材を獲得する体制を実現している。また、法人化時に30あった学内委員会を、14の委員会に集約し、教員の管理運営面での負担を軽減するとともに、担当理事が責任者となり、総合的な視点から、効率的な運営を行っている。(資料11-1-2)

執行体制としては、学長の下に常勤理事3名及び非常勤の理事1名を置き、各理事の所掌分担及び権限責任を明確にしている(資料11-1-3)。また、学長補佐6名を加え、学長の補佐体制を強化しており、理事及び学長補佐等を構成員とする教育戦略会議及び研究戦略会議において個別の課題に対する企画立案を行い、役員及び研究科長等を構成員とする総合企画会議等での検討を経て、全学で具体化に取り組む体制としている。集中的な検討を必要とする課題については、適宜、ワーキンググループを設置するなど、迅速な課題解決型の運営体制としている。

学長は、学長選考会議規程(資料11-1-4)及び学長選考規程(資料11-1-5)に基づき、経営協議会委員5名、評議員5名及び理事3名以内で構成される学長選考会議が、学長候補者の選考を行い、文部科学大臣により任命されている。

理事及び学長補佐は、学長が任命している。研究科長は、学長と理事で構成される研究科長選考会議において候補者を選出し、学長が任命している。このように学長選考会議において選ばれた学長が、理事、学長補佐や研究科長等の任命権を保持し、リーダーシップが発揮できる体制となっている。

【学生・職員・学外者からのニーズの把握と反映】

管理運営に対する学生からのニーズの把握のために、修了予定者に対してアンケート調査を毎年度行い、大学に対する意見・要望の聴取に努めており、必要に応じて役員で検討を行うこととしている。また、各研究科に研究科長に直接メールで要望等を伝える仕組みを整備している。

また、教員及び事務職員等からのニーズの把握のため、平成17年度に本学の教育研究環境や業務内容等に関するアンケート調査(資料11-1-6)を外部調査機関に委託して実施した。調査結果については、役員で検討を行い、施策に反映させている。また、講座の責任者として教授等には、毎年、自己点検・評価書の提出を求めており、その際、管理運営への意見を求め、役員に報告される仕組みとしている。

学外関係者からのニーズの把握として、毎年度、各研究科においてアドバイザー委員会を開催し、積極的に外部有識者の意見を取り入れており、各研究科のカリキュラムなどに反映させている。

【監事体制】

監事監査

本学では監事監査規程(資料11-1-7)を制定し、年度毎に監査計画を策定し、各事業年度における業務監査及び会計監査を実施している。監事は役員会、教育研究評議会、経営協議会等の重要な会議に陪席し意見を述べるほか、業務実績報告書等の重要な書類を閲覧して、業務の実施状況を調査している。また、重点監査項目を策定し、大学の管理運営に関する諸業務に関して適切な助言と指導を行うとともに、会計処理状況を把握し、財務諸表及び決算報告書について意見を述べている(資料11-1-8)。

内部監査

本学では内部監査規程に基づき監査室が設置され、規程及び内部監査実施要領を基に、年度計画を定めて計画的に定期監査を実施するとともに、必要に応じて随時監査を実施している。

監査室が行う監査として会計監査及び業務監査を実施しており、会計監査においては日常監査を実施し、適正な会計処理に加えて、経済性、効率性等を検証している。業務監査においても業務の効率性、有効性を監査し、大学運営の適正化に努めている。

また、監査室は、監事及び会計監査人と連携をとり、効率的な監査を実施している。

【事務組織】

事務組織は、研究科に部局事務を置かない一元化組織として、総務担当理事(事務局長)の下、教育研究支援部及び経営企画部の2部7課2室体制(資料11-1-9)としている。平成19年10月1日現在、常勤職員128名、有期契約職員8名、派遣職員20名を配置している。

本学独自の研修として、初任者研修、英会話研修、簿記研修を実施しているほか、平成19年度から従来の階層別研修等に代わるものとして、意志決定の迅速化を目的としたコミュニケーション・スキルアップ研修を実施しており、その実効性について検証していくこととしている。

また、文部科学省国際教育交流担当職員長期研修プログラムへ事務職員を派遣(平成17年度1名、平成20年度1名予定)、日本学術振興会国際学術交流研修へ事務職員を派遣(平成20年度1名予定)、技術移転人材育成プログラム(米国弁理士事務所における研修)へ事務職員及び技術職員を派遣(平成18年度6名、平成19年度11名)する等、グローバル化及び職務の高度専門化に対応した職員の育成にも積極的に取り組んでいる。

その他、文部科学省、国立大学協会、人事院及び日本学生支援機構等の他機関が実施する研修にも、教職員を積極的に派遣している。

【活動状況に関するデータの収集】

構成員が大学の目的や計画等を理解し、個々の業務を遂行することが重要であるとの認識の下、大学の目的・理念、中期目標・計画及び年度計画、年度実績報告書等を大学のホームページ上に掲載するほか(資料11-1-10)、学内専用ホームページにおいて、役員会等の主要な会議の議事録を掲載しており、構成員はいつでも閲覧できる仕組みとしている。

適切な意志決定を行うため、教育研究活動、産学官連携活動、国際交流活動等の本学の活動状況を、ホームページ及び学内専用ホームページに掲載(資料11-1-11~12)しており、役員をはじめ構成員は、大学の活動状況を随時把握することができる。これら大学の活動状況については、担当課・室が、基本的なデータを把握・蓄積しており、企画総務課評価・調査統計係において、組織として必要とするデータを一元管理している。さらに、平成19年度に大学独自の研究者業績DBの運用を開始し、教員の諸活動の一元的な管理に努め、今後、他のデータベースとの連携や積極的な活用を目指している。

基準11-2

大学の目的を達成するために、大学の活動の総合的な状況に関する自己点検・評価が行われ、その結果が公表されていること。

【自己点検・評価体制】

自己点検・評価体制として、国立大学法人法に基づき、経営協議会及び教育研究評議会を置き、経営及び教育研究に関る自己点検・評価について審議することとしている。また、「評価に関する規程」を制定し、自己評価会議及び外部評価会議からなる評価会議を設置している。このような評価に関する支援事務体制として、企画総務課において自己点検・評価及び根拠となる資料やデータを集約する評価・調査統計係を設置し、データの一元管理を行っている。

このような体制の下、役員が中期目標・計画の達成状況を定期的に把握し、経営協議会及び教育研究評議会並びに役員会の審議を経て、実績報告書として自己点検・評価を行い、毎年度の業務実績報告書は、本学のホームページ上で学内外に公開されている(資料11-2-1)。

また、自己評価会議の下、各講座の学生の配属及び修了状況等の教育活動データ、外部資金獲得状況等の研究活動データを基に、毎年度、各講座で自己点検・評価を行い、研究科長は、その自己点検・評価を下に、研究科の教育研究活動等の状況を取りまとめ、学長に報告を行っている。平成19年度には、評価に係る作業の軽減も踏まえ、認証評価に準じた方法自己点検・評価として行い、公表する予定である。

【外部評価】

法人の各年度終了時の評価として、当該事業年度に係る業務の実績に関する報告書を作成し、国立大学法人評価委員会の評価を受けている。

また、外部者による検証を行うため、評価に関する規程(資料11-2-2)を制定し、全学外部評価会議及び研究科外部評価会議を設置し、自己点検・評価書について検証を行うことを決定している。

さらに、開学当初から、外部有識者で構成されるアドバイザー委員会を各研究科に設置(資料11-2-3)し、教育実績、研究実績、教員の流動性等、毎年度の各研究科の状況について客観的なデータ(資料11-2-4)を示し、外部者の意見を集約する取組を行っている。

【評価結果の反映】

評価結果を大学運営の改善に活用するための具体的方策として、中期計画において「総合企画会議において、評価会議の点検・評価に基づき、研究教育・社会貢献及び国際交流などに関する新たな施策を企画立案する」ことを掲げている。毎年度実施している研究科及び講座の自己点検・評価は、役員に報告されるとともに、総合企画会議において検討が行われ、翌年度の年度計画に反映されている。平成19年度に行う自己点検・評価結果についても、役員に報告が行われ、総合企画会議及び全学教育委員会等において検討を行い、次期中期計画に反映する予定である。

また、業務実績報告書に対する国立大学法人評価委員会による評価結果は、役員会並びに経営協議会及び教育研究評議会に報告し、指摘事項について改善していくこととしている。

基準11-3

大学の教育研究活動等の状況について、積極的に情報発信を行っていること。

【情報発信に関する実施体制】

企画総務課に広報渉外係を置き、広報担当の事務スタッフとして、常勤職員2名、派遣職員1名を配置し、ホームページの管理、広報誌の発行、一般見学者の受入れ、報道機関に対する情報提供等の学内外への情報発信を担当している。さらに、広報担当理事及び教員と学外有識者(マスコミ関係者)等で構成する広報戦略会議を平成16年度から設置し、情報発信の充実に向けた検討を行っている。また、各研究科でもホームページ担当者を置き、研究科からの情報発信を行っている。

【情報発信に関する施策】

情報発信に関する基本方針は、「研究教育などの諸活動に関する情報を積極的に公表し、社会への説明責任を果たす」と、中期目標に明示され、それを達成するため具体的方針は次のとおり中期計画に定めている。

「中期計画」

これらに基づき、以下のような情報発信を行っている。

  • 報道機関に対する情報提供:報道機関に対し、研究成果発表やイベントについて積極的に情報提供を行っている(資料11-3-1)。
  • ホームページ:大学・研究科の目的・理念等の基本的な情報、教育・研究・産官学連携・地域連携・国際交流等の活動状況、入学試験情報等に加えて、トップページを飾る写真を随時更新することにより、本学の活動状況の情報発信をするとともに、新着情報欄、イベント情報欄では、大学及び各研究科からの研究成果発表、教育研究活動の情報発信を随時行っている(資料11-3-2)。ホームページのシステムの改善を継続的に進めており、平成18年度のホームページリニューアルにより、最新情報の掲載作業が容易になり、より円滑に運用できるようになったため、迅速に情報発信できるようになっている。
  • 冊子類:ガイドブック(日・英)、大学ランキングリーフレット「大学院をどう選ぶか」、広報誌せんたん(年3回)、小中学生向け大学案内リーフレットを発行している(資料11-3-3~6)。
  • 一般見学者の受入れ:一般見学者を広く受入れ、本学の研究教育について積極的に公開している(資料11-3-7)。
  • 電子図書館において、学位論文、科研費報告書等の研究成果の情報発信を行っている。

また、「独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律」に規定されている各種法人情報については、本学ホームページに公開し、情報提供を行っている(資料11-3-8)。また、同法律等に基づき、情報公開窓口(資料11-3-9)を設置し、開示請求があった場合は迅速に対応している。

基準11-4

安全衛生管理に関する体制が整備され、学生及び教職員の安全確保を行っていること。

【安全衛生管理に関する実施体制】

安全管理体制については、安全管理を包括的に定めた本学の安全衛生管理規則に基づき、年間の安全計画を策定し、安全管理に係る諸委員会を総括する担当理事を責任者とする総合安全衛生管理委員会を置いている。その下に、労働安全衛生法に基づき、作業環境・職場環境について検討を行い、その保全を図る「安全衛生委員会」、放射線及びX線を利用した実験計画の審査と放射線実験施設の管理に責任を持つ「放射線安全委員会」、遺伝子組換え実験、ヒト由来資料を用いる実験、病原性生物を用いる実験に関して、実験場所の確認を含めた、計画の審査を行う「遺伝子組換え生物等安全衛生管理委員会」を設置している。加えて、安全性に対する配慮が特に必要である化学物質に対し「化学物質管理専門部会」、高圧ガスに対し「高圧ガス管理専門部会」を置いて、それらの安全管理を行っている。各委員会は、担当理事を責任者として、定期的又は必要に応じて開催しており、安全管理に係る実務を一元的に担当する環境安全衛生管理室も設置している。(資料11-4-1)

また、科学及び動物愛護の観点に加え、職員及び学生等の安全確保の観点から動物実験等を適正に行うため、動物実験等の実施に関する規程を制定し、体制を整備している。

【安全衛生管理に関する施策】

各委員会・専門部会において、法令に基づく実験の管理と作業環境・職場環境の保全等を行っており、薬品管理について化学薬品管理支援システムを導入して厳密な管理を行っている。

労働安全衛生法の規定に従い、毎月1回、産業医が、毎週1回、衛生管理者がそれぞれ職場の定期巡視を実施し、改善が必要な事項があれば、安全衛生委員会に報告している。さらに、安全週間を設け、年1回、担当理事並びに各研究科長が、各研究科等の安全管理を巡視し、必要があれば、改善を指示している。

教育研究活動中に生じた事故や怪我についても、その状況、発生原因等についての当事者の報告書を、研究科長を通して、環境安全衛生管理室へ提出し、安全担当理事は必要な改善を指示することとしている。

学生については、入学時に放射性物質、化学物質の取扱等についての安全講習を実施しており、その後も、教員を含めて、年1回必要な安全衛生教育を継続的に実施している。また、こうした教育のために、毎年、必要な改訂を行ったテキストを作成し、全学生・教員に配付している。

(2)優れた点及び改善を要する点

【優れた点】

法令に定められている審議機関である「役員会」、「経営協議会」及び「教育研究評議会」に加え、「総合企画会議」、「評価会議」及び「教員選考会議」を設置している。また、理事4名を置き、各理事の職務分担及び権限責任を明確にし、戦略的・機動的な運営を行うとともに、学長補佐6名を置き、教育研究上の諸課題について、大学の戦略に関して検討を行っている。研究科に部局事務を置かない事務一元化による効率的な組織体制の下、必要な事務職員が配置されており、学内委員会も必要なものを厳選している。以上のような体制により、学長のリーダーシップの下に戦略的・機動的な運営が行われている。

【改善を要する点】

評価活動に必要な根拠資料やデータのさらに効率的な収集・蓄積のために、研究者業績データベース等各種データベースの連携を検討する必要がある。また、ホームページに関しても、より戦略的・機動的な情報発信、大学のホームページと研究科のホームページの連携等、一層の充実が必須である。

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基準12 研究活動の状況

(1)基準に関する状況

基準12-1

大学の目的に照らして、研究活動を実施するために必要な体制が適切に整備されて、機能していること。

【研究体制】

本学における研究組織は、教育組織と一体であり、本学が取り組むべき先端科学技術分野として、情報科学、バイオサイエンス及び物質創成科学分野を選択し、3つの研究科を設置している。これらは「第3期科学技術基本計画」で定められた重点推進4分野の内、3分野(ライフサイエンス、情報通信、ナノテクノロジー・材料)を先取りするものであり、残る環境分野とも密接に関連する教育研究活動を展開している。

教育研究の基幹組織として基幹講座を、情報科学研究科に26講座、バイオサイエンス研究科に21講座、物質創成科学研究科に15講座、設置している(平成19年10月1日現在)。基幹講座は、基本的に教授1、准教授1、助教2としているが、若手研究者の育成にも配慮し、准教授が主宰する講座も必要に応じて設置している。基幹講座に所属する教員の総数は、教授56名、准教授44名、助教105名である。また、連携講座6と教育連携講座14を設置し、学外の研究機関等と連携することにより、社会の進展や要請に応じた教育研究活動を実施している。加えて、「特任教員、ポストドクトラルフェロー(PD)や特別協力研究員の活用を促進する」という中期計画の下、受託研究費や科学研究費補助金等の様々な研究経費を活用して、特任教員23名、PD72名を雇用している。(平成19年10月1日現在)

研究支援組織として、情報科学センター、遺伝子教育研究センター、物質科学教育研究センター及び先端科学技術研究調査センターの4学内共同教育研究施設を設置している。情報科学センターでは、一元的に運営されるコンピュターネットワークのもとに、諸計算機サーバを含む最先端の全学情報環境を提供している。遺伝子教育研究センターでは、最先端のバイオサイエンス研究に必須である、大型機器の管理及び放射線実験施設、動物実験施設、植物温室等の管理運営や遺伝子改変マウスの作製等の技術的な支援を行なっている。物質科学教育研究センターでは、物質や材料の分析・解析・物性評価、さらには微細加工など最先端の設備・機器群の管理運営を行っている。先端科学技術研究調査センターでは、先端科学技術分野に関する研究調査を行うとともに、知的財産権の取得や研究成果の産官学への移転の支援を行っている。これらの学内共同教育研究施設には、教員15名(兼務を含む)、技術職員21名が配置されている。また、電子図書館を設置し、世界中の多くのジャーナルや文献を24時間提供するとともに、引用文献情報データベース「Web of Science」等のデータベースを導入し、学術情報基盤を整備している。そのほか、競争的資金の申請等を支援する事務体制として、研究協力課を設置している。

研究推進体制として、大学の研究企画を戦略的に推進するため、総合企画会議を設けており、研究企画活動を活性化するための方策の検討を行っている。平成19年度から、本学における研究活動の目指すべき方向、それに向けた戦略等を検討する研究戦略会議を総合企画会議の下に設置した。また、「国内外に優秀な人材を求め、世界的に優れた研究体制にする」(中期計画)ために、学長・役員会の方針の下で、一貫した戦略的な教員採用を行うために、研究科長を責任者とする常設の教員選考会議を設置している。

このような体制の下、基準12-2で述べるとおり研究活動が活発に行われており、先端科学技術分野において特筆すべき研究成果を上げている。

【研究活動に関する施策】

研究活動に関する施策として、中期目標に『基盤的な学問領域「情報科学」、「バイオサイエンス」及び「物質創成科学」を深化させるとともに、融合領域へ積極的に取り組み、最先端の問題の探求とその解明を目指す。』及び『社会の要請が強い課題について積極的に取り組み、次代の社会を創造する国際的水準の研究成果を創出する。』ことを研究目標として掲げ、新たな教育研究分野への挑戦として情報生命科学専攻を設置するとともに、時代の要請・先端科学の進展に対応するため先端科学技術分野の研究活動を展開している。さらに、次期中期目標・計画の策定に向け、研究戦略会議において、先端研究の動向及び社会的要請に基づき、本学の研究戦略を練るためのベースとするため当面「環境」を大学の統一キーワードとして選択した。今後それを、研究科間の連携を含めて、どのように展開していくか具体的に検討し、研究活動に反映させる予定である。

研究の活性化に向けた研究費の戦略的配分として、学長のイニシアティブの下、学内融合研究の推進のための重点戦略経費を配分(資料12-1-1)しており、平成19年度は、中間評価を実施し、「革新生体計測融合クラスター」、「形づくりのシステム生物学」、「外界と相互作用するヒトのからだ」という、計画研究3件について支援を行った。その結果、これらの研究内容はJSTのCRESTやバイオンフォマティクス推進事業への採択等につながっている。また、新規に採用された教員について研究スペース等の整備を実施するほか、助教を主とする若手研究者の長期在外研究を同経費により支援している。

こうした重点戦略経費(運営費交付金)による研究経費の戦略的配分に加えて、グローバルCOE経費、大学院教育改革支援プログラム経費を活用して、助教・博士後期課程学生など若手研究者の自立的研究を支援することにより、自立した研究者としての訓練を行うとともに、研究の活性化を図っている。また、准教授、助教及び博士後期課程学生等に、本学支援財団による支援として、8つの研究テーマに対し18,200千円、27件の海外派遣支援に対し5,068千円の助成を行っている。こうした若手研究者の支援は、公募制により行っており、競争的環境の醸成にも配慮している。

外部資金の獲得に向けては、各種競争的資金、助成金等の公募情報を関係者にメール通知するとともに、学内専用ホームページに最新の情報を常に掲載しており、科学研究費補助金については、毎年度、説明会を開催している。グローバルCOE等、組織が応募する競争的資金については、役員会・総合企画会議等で、基本方針を議論するとともに、申請書等のチェックも行っている。

産官学連携の推進については、詳細について基準13にて記述するが、先端科学技術研究調査センター、知的財産本部(知的財産部、ビジネスイノベーション部)、TLO部、産官学連携室から構成される産官学連携推進本部を設置し、そこに配置された専任コーディネータが学内の研究成果を把握し、社会との橋渡しを行う活動を行っている。

なお、「研究活動上の行動規範」を定め研究者が研究する上で求められる11からなる行動規範を定めるとともに、「研究活動上の不正行為の防止等に関する規程」を制定(資料12-1-2)し、体制を整備している(資料12-1-3)。そのほか、研究活動上の不正行為の防止について数回の通知を行い、教職員への周知徹底を図っている。また、ヒトゲノムやヒトES細胞等のヒト由来材料によるバイオサイエンス研究の急速な進展に伴い、個人情報保護や人権尊重等、倫理上の問題に配慮した研究の実施のため、ヒトゲノム・遺伝子解析研究及びヒトES細胞研究に関する規程等を制定し、体制を整備している。

【研究活動の状況把握と改善】

科学研究費補助金等の競争的研究資金、共同研究・受託研究の獲得状況は、常に役員会等に報告され、検討を行っている。また、自己評価会議の下、自己点検・評価を定期的に行い、研究科や講座等における研究活動の状況が報告される仕組みとなっているほか、研究活動の状況を常時把握することを目的として、教員の諸活動の実績を統一的に記録する研究者業績データベースを運用している。

このような研究活動のモニタリング体制の下、問題点等があれば役員会や総合企画会議等において改善する仕組みとなっているほか、学長を中心とした役員メンバーによるヒアリングを行い、研究科長等から直接要望を集約し、資源配分を行っている。また、学長・役員会の方針の下、研究科長を責任者とする常設の教員選考会議において、既存の分野の継続に拘らず、大学の将来を見据えた採用分野・人材を獲得している。

基準12-2

大学の目的に照らして、研究活動が活発に行われており、研究の成果が上がっていること。

【論文発表・学会発表等】

Thomson Scientific社のデータベースでは、本学に所属する研究者が著者となっている総説等を除く原著論文数は、2002年から2006年までの5年間、それぞれ、304、332、331、354、357編であり、2007年についても、2008年1月4日現在、306編である。同データベースを用いた内閣府の「国立大学法人等の科学技術関係活動に関する調査結果」による分析では、教員1人当たりの論文数は1.51編である。この数は、我国の独立行政法人及び国立大学法人中で7位、国立大学法人中5位であり、研究活動の成果が我が国のトップレベルにあることを示している。また、研究者業績データベースの登録状況によれば、過去3年間の学術論文(査読つき)は333報/370報/396報、国際会議論文(査読つき)は274件/322件/307件、国際学会発表は197件/281件/262件であり(平成16年度/平成17年度/平成18年度)、例年、学術論文や国際学会等での発表を活発に行っている(資料12-2-1)。

各論文の科学的インパクトを示す被引用回数は、過去10年間の論文の平均値が16.0であり、研究成果の質も高い。特に、微生物学分野での被引用回数34.6は、世界13位、国内2位、動植物学分野での被引用回数22.8は、世界28位、国内3位、分子生物学・遺伝学分野での被引用回数39.4は、世界104位、国内4位であり、研究水準は世界のトップレベルにあり、本学の研究活動の質の高さを示している。

【科学研究費補助金】

研究活動の成果の指標と一つである科学研究費補助金の獲得状況は、以下のとおり約10億円程度を毎年度獲得している(資料12-2-2)。新規課題の採択率も上位を占めており、平成19年度は大学では9位である。また、第71回総合科学技術会議の資料によれば、平成18年度の教員1人あたりの採択件数は、第1位、配分額は、第3位である。

科学研究費補助金
年度件数直接経費(億円)間接経費(億円)
平成16年度 179 9.06 0.79
平成17年度 207 8.50 0.83
平成18年度 229 9.29 0.91
平成19年度 214 8.89 1.20
平成19年度科学研究費補助金(新規採択分)
機関名採択率(%)採択件数(件)
1 一橋大学 56.1 37
2 東京外国語大学 43.2 32
3 慶應義塾大学 36.0 306
4 東京大学 34.3 1,148
5 甲南大学 33.8 23
6 京都府立大学 33.3 23
6 奈良教育大学 33.3 18
8 京都大学 32.3 924
9 奈良先端科学技術大学院大学 32.0 79

(注)申請件数50件以上の機関を対象。
(採択率=採択件数/申請件数)

平成18年度教員一人当たりの採択件数

①NAIST:0.87 ②京都大:0.80 ③東京大:0.72 ④東北大:0.71 ⑤大阪大:0.70

平成18年度教員一人当たりの配分額(千円)

①東京大:5,043 ②京都大:4,432 ③NAIST:4,260 ④東工大:3,918 ⑤東北大:3,796

【共同研究・受託研究】

共同研究・受託研究の件数、研究費は次のとおりである(資料12-2-3)。

年度共同研究受託研究
件数金額(億円)件数金額(億円)
平成16年度 112 1.86 76 11.82
平成17年度 126 2.15 83 12.81
平成18年度 138 2.49 84 11.45

第71回総合科学技術会議の資料によると、受け入れ研究費の総額は国立大学法人中第17位であり、教員1人当たりでみると、共同・受託研究の件数は0.78件、第5位、受け入れ金額は6.4百万円、第3位である。

平成18年度教員一人当たりの共同・受託研究の件数

①帯畜大:1.76 ②北先大:0.96 ③東農大:0.90 ④豊技大:0.82 ⑤NAIST:0.78

平成18年度教員一人当たりの共同・受託研究の受入金額(千円)

①北先大:7,115 ②東京大:6,689 ③NAIST:6,397 ④東工大:5,266 ⑤京都大:5,089

なお、第71回総合科学技術会議の資料によれば、競争的資金を含め、外部資金比率は、第5位になっている。

平成18年度外部資金比率

①豊技大:19.3% ②東工大:18.8% ③東京大:18.7% ④東農大:18.4% ⑤NAIST:17.8%

【その他競争的資金の獲得状況】

平成18年度のその他競争的資金の獲得状況は、資料12-2-4のとおりである。21世紀COEプログラムの事後評価においては、「音声メディアインタフェイスやモーバイルネットワークテレプレゼンスなど、個別のメディア処理に関して、世界的な成果を上げている」や「研究拠点としてあげた3本柱のそれぞれが着実に進捗したことは、発表論文の被引用度ランキングにおいても見られ、研究面での拠点形成としてほぼ満足できる」とコメントされており、研究成果について質的にも高い評価を得ている。

【特許実施収入】

平成18年度の特許実施料収入は20,268千円であり、国立大学法人中5位に位置しており、大学発ベンチャー数も22件、14位である。

平成18年度教員一人当たりの実施料収入(千円)

①NAIST:92.97 ②名古大:87.86 ③東京大:40.43 ④九工大:29.01 ⑤東工大:23.86

【受賞状況】

論文賞等の受賞状況は、資料12-2-5のとおりであり、文部科学大臣表彰「若手科学者賞」等の若手研究者の受賞や学生が関与している受賞も多い。

(2)優れた点及び改善を要する点

【優れた点】

発表論文数とその引用度、国内外の学会での発表数、科学研究費補助金やその他の競争資金の獲得状況、共同研究・受託研究の件数、受け入れ研究費、特許実施料収入、大学発ベンチャー数等に示されるように、我国トップレベルの水準の研究活動が展開されている。

【改善を要する点】

我が国を代表する研究者を採用又は育成し、先端科学技術分野をリードし続ける大学として、科学研究費補助金等の量的・質的側面から現状を客観的に見据え、個々の教員に任せるだけでなく、今後の研究戦略を組織的に策定し、実現していく必要がある。

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基準13 地域連携活動の状況

(1)基準に関する状況

基準13

大学の目的に照らして、地域連携活動が適切に行われ、成果を上げていること。

【地域連携の方針】

「一般市民や高校生・大学生などを対象に広く科学技術に関する啓蒙活動を積極的に推進する」という中期目標の下、その具体的方策として、中期計画では以下の活動を掲げている。

「中期計画」

こうした本学が推進する教育サービスは、大学ホームページや大学ガイドブック等に掲載し、学内外に広く周知している。また、小・中学生向け大学案内リーフレットにより、本学が提供する教育サービスを小中学生にも分かりやすく理解してもらうため、様々な機会に配布している。

【地域連携活動状況】

中期計画に基づき、以下の教育サービス活動を、毎年度実施している。

  • 市民を対象とする「公開講座」を平成6年度から開催しており、平成19年度は、「ネットワークとメディアが拓く新時代-感じる・伝える・考える-」をテーマに、4日間全8コマからなる公開講座を実施した。また、県内12大学で構成している奈良県大学連合主催の「なら講座」の参加のほか、関西学研都市6大学市民公開講座の開催にも参加するなど他機関との連携による活動を展開している。これらの活動により、大学の持っている知識・情報の学習の機会を、地域社会に提供することができている。
  • 一般市民向け及び受験生のためのオープンキャンパスを、毎年度それぞれ開催している。各研究科においても、高校生、大学生及び中学・高校の理科教諭等を対象に体験入学会を開催し、本学の研究活動を紹介し、科学への興味を育てている。
  • 奈良県内及び生駒市等の学校と連携し、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)事業、SPP(サイエンス・パートナーシップ・プログラム)事業、高大連携事業を実施し、地域での教育活動に貢献している。SSH事業では、高校生が研究室での研究を体験する高校生ラボステイを実施、SPP事業では奈良県の東大寺学園へ出前授業を実施し、高大連携事業でも、奈良県内の高校2校に対し、出前講演会を実施している。
  • 奈良県内及び生駒市等の学校と連携し、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)事業、SPP(サイエンス・パートナーシップ・プログラム)事業、高大連携事業を実施し、地域での教育活動に貢献している。SSH事業では、高校生が研究室での研究を体験する高校生ラボステイを実施、SPP事業では奈良県の東大寺学園へ出前授業を実施し、高大連携事業でも、奈良県内の高校2校に対し、出前講演会を実施している。
  • 科学研究費補助金事業の「ひらめき☆ときめきサイエンス~ようこそ大学の研究室へ~KAKENHI」において、研究成果の社会還元・普及のため小中高生に対して講義及び実習を行っている。その他にも、生駒市と連携した学校教育支援事業として「大学教員による小学生及び中学生への特別授業」を行っているほか、生駒市の小学生を対象に、先端科学技術体験プログラムを年6回、生駒市北コミュニティーセンターにて実施し、体験的な学習を提供している。

また、新たな試みとして、本学の研究活動を一般の人に分かりやすく説明することにより、科学への関心を高めることを狙いとして、ホームページ上に「NAIST先端科学館」を設置(資料13-1-1)している。また、平成19年度は、国立科学博物館で『上野の山発 旬の情報発信シリーズ(第14回)「バーチャル⇔リアリティ~見て聴いてさわって冒険体験~」』として、体験型展示、体験プログラムや特別講演会を実施し、体験を通じて小学生から年配の方まで幅広い人々に最先端の科学技術を紹介した(資料13-1-2)。

さらに、教育サービスではないが、地域連携の一例として、平成17年度から大学が立地する生駒市の消防本部と共同研究を行っており、IKOMA119プロジェクトとして、救急医療の現場における次世代インターネット技術の活用について研究面で協力している。

【参加者数及び参加者の満足度】

諸活動への参加者数は、資料13-1-3のとおりである。一般市民を対象としたオープンキャンパスは、平成14年度と比較して、平成19年度は約2倍の約3千人が参加している(資料13-1-4)。平成19年度は、『上野の山発 旬の情報発信シリーズ(第14回)「バーチャル⇔リアリティ~見て聴いてさわって冒険体験~」』を開催し、2万5千人を越える参加があった。しかしながら、公開講座の参加者数は、平成16年度97人/平成17年度85人/平成18年度74人/平成19年度63人と年々減少している。

諸活動の参加者の満足度も高く、例えば、一般市民を対象としたオープンキャンパスでは、回答者の9割を超える参加者が満足しており、リピーターが約35%をしめる。公開講座では、講義内容について参加者の84%が適当であったと評価しており、約80%がリピーターである(資料13-1-5)。

奈良県内の高校との連携事業、生駒市と連携した小中学校教育の支援については、参加した学生が科学に興味を持った等のコメントが多く、毎年度、実施の要請がある。

【地域連携活動の質の向上】

地域連携の改善を図るため、組織的には、公開講座、オープンキャンパス、体験入学等について参加者に対してアンケート調査等を実施し、広報戦略会議等にて活動の状況や問題点を把握することとしている。個別にもアンケート結果に基づき、問題点を把握、分析し、改善策を検討するとともに、講師担当者が事業実施にあたり、気づいた点やアドバイスを次回の担当者に引継ぎ、より良い教育サービスへの改善に努めている(資料13-1-6~7)。また、生駒市・高校との連携事業に関しては、その質の向上のために、先方の担当者と協議を行っている。

(2)優れた点及び改善を要する点

【優れた点】

小学生から大学生までの対象別の教育サービスを提供するとともに、広く一般市民対象とした事業も継続的に実施している。また、地域と連携して理科教育、生涯教育に積極的に貢献し、学習意欲の向上を図る教育サービスを活発に行っている点も評価される。また、本学独自の「NAIST先端科学館」を設置し、各事業実施後も科学への関心を継続させる役割を果たし、地域貢献事業の拠点としての機能も併せ持つ点は大いに評価される。

【改善を要する点】

市民を対象とする本学主催の「公開講座」の受講者数が年々減少しているため、広報戦略会議において受講料の見直し、公開講座の開催方法を含め、今後検討、改善していく予定である。

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基準14 産官学連携活動の状況

(1)基準に関する状況

基準14

大学の目的に照らして、産官学連携活動が適切に行われ、成果を上げていること。

【産官学連携の実施・推進体制】

「研究成果を人類の知的財産として蓄積するとともに、産学官連携を推進し、大学の研究成果を社会全体に還元する」という中期目標の下、産官学連携を適切に進めるため、産官学連携担当副学長を責任者とし、先端科学技術研究調査部、知的財産本部(知的財産部、ビジネスイノベーション部)、TLO部、産官学連携室から構成される産官学連携推進本部を資料14-1-1のとおり整備している。また、ベンチャー育成のため、ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー、技術インキュベーションルームを学内に整備している。さらに、産官学の連携を強化するため、東京、東大阪、けいはんな学研都市にオフィス等を用意するほか、産官学連携活動に伴い発生する利益相反問題に適切に対応するために利益相反マネジメント室を設置している。

産官学連携を推進するための事務体制として、平成5年度当初から、事務局に研究協力課を設置しており、産官学連携推進の事務的な支援業務にあたっている。

そのほか、平成19年度からは、大学資産である大型最先端装置を社会に開放するために受託試験制度を構築した。

【産官学連携に関する方針】

国立大学法人化と同時に、産官学連携ポリシー、知的財産ポリシー及び利益相反ポリシーを定めるとともに、各種規程を整備している。産官学連携ポリシーにおいて、国際的取組みを規定し、また、全国に先駆け、知的財産ポリシーにおいても、アカデミックフリーダム、アカデミックユースを定めたことなど、常に、全国で最も先進的な取組みを規程化しており、産官学連携に関する施策は適切に定められている。具体的には、「研究及び教育に加え、本学の研究成果を社会に還元することで産業技術の発展・向上に貢献することが本学の重要な使命のひとつとして、その認識を新たにし、その使命の達成に向け、研究成果としての知的資産の保護、産業界への技術移転、学内の先端的研究設備の開放、共同研究・受託研究などを大学全体で多角的かつ戦略的に進め、我が国の経済発展に貢献することを目指すこと」としている。

【産官学連携活動状況】

共同研究・受託研究等

共同研究・受託研究・奨学寄附金の件数、受け入れ額は、資料14-1-2のとおりである。

共同研究・受託研究の受け入れ研究費の総額は、国立大学法人中17位であり、教員1人あたりでみると、共同・受託研究の件数は0.78件、5位、受け入れ金額は6.4百万円、3位であり、共同研究・受託研究による産官学連携も積極的に進められている。その中には、平成13―平成17年度のけいはんな知的クラスター事業、平成18年度から奈良県地域結集事業の中核機関としての取組みなど、地域経済の活性化のための組織的な産官学連携も含まれている。また、教員の兼業による産官学連携にも取り組んでおり、営利企業との兼業の届出数は、のべ約150件(平成16-19年度)に上がる。そのほか、技術移転事業者や研究成果活用企業の役員等や株式会社の監査役の兼業制度を整備し、研究成果活用企業の役員として30件、株式会社の監査役として2件を認めた。

特許出願等

研究成果の知的財産権の確保と社会への移転を推進しており、産官学連携推進本部のコーディネータが、本学における研究シーズの把握に努め、発明者と相談する「事前相談会議」、発明者とコーディネータ全員が発明のブラッシュアップ、特許請求の範囲と市場性の関係、発明の応用性について検討する「特許戦略会議」、コーディネータ全員による「評価会議」等を設けている。事前相談会議は年60回以上、特許戦略会議は年40回以上、評価会議は、年50回以上とそれぞれ平均して週1回程度行っており、平成17年度、文部科学省「知的財産本部整備事業」の中間評価において、A評価を受けるとともに、「スーパー産学官連携本部」のモデル事業に、全国6大学のうちの1校として選定されている。このような体制の下、特許出願、取得、ライセンス供与数は、資料14-1-3のとおりであり、全国トップレベルのライセンス収入をあげている。20万円以上の教員1人当たりのライセンス収入は、日本の平均の約1万円をはるかに凌駕し、MITの30万円やスタンフォード大の50万円を視野に入れている(なお、海外の大学は、正規の教員の約10倍のリサーチャーが活動しており、彼らが研究の中心をなしているため、教員にはこれらのリサーチャーも含めている。)。

情報発信

産官学連携を推進するため、産業界・研究機関等を対象に本学の教育研究活動に関する情報発信を積極的に行っている。具体的には、NAIST東京フォーラムを平成9年度から毎年1回開催しており、平成18年度は「先端科学技術を駆使した環境配慮社会」をテーマとした基調講演・パネルディスカッション等を実施した。また、関西経済連合及び本学支援財団との共催による「産学連携フォーラム」もこれまで18回開催するとともに、地元奈良県との研究交流を目的とした「高山研究交流会」を実施するなど地域との連携にも積極的に対応している。さらに、最先端の研究成果について分かりやすく説明した広報誌「せんたん」を年3回発行し、産業界・研究機関等に配布している。

(2)優れた点及び改善を要する点

【優れた点】

産官学連携活動を推進する組織として、産官学連携推進本部が整備され、かつ、平成19年12月18日に同本部のTLO部が経済産業省及び文部科学省の承認TLOとして認可されている。

共同研究・受託研究の教員1人当たりの実施件数及び受入額が何れも国内でトップ5に位置付けられており、知的財産においても、教員1人当たりのライセンス収入、特許出願件数及び発明届出件数が国内でトップ5に位置付けられている。

【改善を要する点】

国際的な産学連携活動を活発に展開できる体制の強化、組織的な産業界等との連携の強化、共同研究・受託研究の早期実施に向けた契約業務の効率化・迅速化や産官学連携推進本部と事務局研究協力課との効率的な連携などが課題となっている。

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基準15 国際交流活動の状況

(1)基準に関する状況

基準15

大学の目的に照らして、国際交流が適切に行われ、成果を上げていること。

【国際交流の基本方針】

本学の「国際交流の基本方針」を平成17年度に役員会において、以下のように定めた。

「国際交流の基本方針」
  • 国際社会に貢献する人材の養成
    国際的な研究環境の中で切磋琢磨して成果を挙げ、学術活動の発展や科学技術の創造に貢献する優秀な人材を育成する。そのために、本学の教職員や学生の語学力の向上を図り、海外派遣を推進するとともに、海外から研究者や留学生を積極的に受け入れる。
  • 研究連携による知的国際貢献
    最先端の問題の探求と解明に積極的に取り組み、次代の社会に貢献する世界レベルの研究成果を生み出す。その成果を、評価が高い国内外の学術情報誌や学会で発表する。さらに、学術交流協定締結校をはじめ海外の教育・研究機関との連携を密にして、本学の優れた研究資源や研究成果を世界に提供する。

こうした基本方針の下、学生に対するきめ細かな英語教育の実施、学生・教員の海外派遣の推進、研究成果の国際学術誌や国際学会での発表の促進や国際共同研究に取り組んできた。さらに、平成19年3月現在、世界各国の27教育研究機関と学術交流協定を締結し、各々に責任教員を置き、研究者や学生の交流を推進してきた。一方、現在、大学院教育の国際化が要請されていることを踏まえ、国際交流担当理事を責任者とし、総合企画会議の下、教育戦略会議・研究戦略会議において、海外の教育研究機関との組織的な連携による大学院教育の国際化戦略を策定しているところである。また、新たな国際交流方針の実施を含め、国際交流活動に関する全学的支援体制をさらに強化するため国際連携室を設置している。国際連携室には、海外実務研修参加者及び海外学術機関勤務経験者を配置し、学術交流協定等に基づく国際交流活動に関する総合的な企画調整業務を実施するとともに、留学生や外国人研究者に対する生活相談や情報提供サービスを充実する取組を行っている。

【国際交流に関する施策】

学術交流協定取扱要領(資料15-1-1)を制定し、学術交流協定締結の手続きに関し、交流協定が本学の教育研究目的及び国際交流の基本方針に沿ったものであることを明確化し、国際交流のさらなる実質化を図っている。

また、本学の大学院教育の国際化アクションプランを策定中であるが、それを先取りする形で、グローバルCOEによる日中韓の3教育研究機関の連携による研究者養成プログラム、重点配分経費による助教・大学院学生の国際教育プログラム、本学にふさわしい新たな海外連携機関の調査活動が行われている。さらに、「大学院教育グローバル化プラン」として、欧米の交流協定締結校と連携した大学院学生の交換短期と学位審査への相互参加、アジア諸国の交流協定締結校と連携した留学生の受け入れ、英語による大学院教育国際プログラムの設置を柱とした、具体的実施案を策定中である。

【国際交流の質の向上】

年に1回本学における国際交流の状況(教職員や学生の海外派遣状況、外国人研究者の受入状況等)について全学的に調査を行い、役員会・教育研究評議会等において、国際交流の質の向上のために国際交流活動の状況を検証している。また、調査結果(資料15-1-2)についてはHP等により全学的に公開し、今後の国際交流の改善に役立てている。

【国際交流活動状況】

本学の「国際交流の基本方針」に沿って、学生の語学力に応じた外国人教員による英語授業やオンライン学習システムなど学生に対するきめ細かな英語教育の実施、学生・教員の海外派遣の推進、国際学術誌や国際学会での発表の促進や国際共同研究に取り組んできている。

研究者・学生の交流も継続的に行っており、海外の交流協定締結校とは、平成18年度までに、研究者152名、学生113名と職員17名を派遣するとともに、研究者110名、学生73名と職員5名を受入れてきた(資料15-1-3)。その中には、日本学生支援機構の経費による交流協定締結校への学生の短期派遣、締結校の学生の短期受け入れも、基本的に各年度1名ずつ行なわれている。

こうした交流活動の中で、カリフォルニア大学デービス校と連携して、学生に対する1ヶ月間の現地での英語研修プログラムを、平成16年度から実施しているほか、平成19年度に採択されたグローバルCOEプログラムでは生命科学分野の日中米3国トップ大学による教育研究国際ネットワークの形成を目指し、合同シンポジウムと、日中米学生による学生ワークショップを開催している。また、フランスなどの締結校への学生の長期派遣を積極的に実施しており、締結校での学位審査への参加の実績もある。こうした先進的な取り組みは、現在策定中である大学院教育の国際化アクションプランで、さらに組織的に展開する予定である。さらに、学生だけでなく助教を対象とした長期在外研究制度を開始し、国際的に活躍できる若手研究者の育成にも努めている。

(2)優れた点及び改善を要する点

【優れた点】

国際的な教育・研究・交流を一元的に支援できる体制として、国際連携室が設置され、国際交流活動に関する全学的支援体制の強化や留学生や外国人研究者に対する生活相談や情報提供サービスができる体制の整備が進められている。その上で、大学院教育の国際化を目指した、組織的な取り組みが始まっている。

【改善を要する点】

国際連携室が設置されたが、全学的な組織としてさらに機能させるため、充実が必要である。

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