21世紀の大学院

画像:学長 塩﨑 一裕
奈良先端科学技術大学院大学
学長 塩﨑 一裕

 本学は、科学技術分野に特化した国立の大学院大学として1991年に設立されました。当時の創設準備委員会は、学部を置く大学では既存の学問体系に沿った教育研究が行われることが多いため、併設された大学院も組織の再編や転換などに制約が生じる懸念があると指摘しています。奈良先端大は、学部を持たない独立大学院とすることで、先端的な科学技術分野の急速な進展に対応した柔軟な教育研究体制の整備ができるよう、デザインされ、設置されたのです。

 このように「トランスフォーメーション」の遺伝子を組み込まれて誕生した本学は、創立以来、つねに最先端を追求し、その姿を変えてきました。新しい科学技術を開拓し、革新的な融合分野を構想する多様な研究者を採用し、継続的に新たな研究室を設置すると共に、2018年にはそれまでの情報科学、バイオサイエンス、物質創成科学の3研究科を統合して、全学を先端科学技術研究科とする大規模な再編成を行いました。加えて、先進的な分野融合に取り組むデータ駆動型サイエンス創造センター、およびデジタルグリーンイノベーションセンターを設置することで、従来の専門分野の枠組みにとらわれない新しい研究分野と大学院カリキュラムの創出を追求しています。

 大学院発祥の歴史は19世紀半ばに遡りますが、奈良先端大が弛まぬ刷新を重ねて「21世紀の大学院」を追求し続けているのには、いくつかの理由があります。一つは、SDGsや地球温暖化、新型感染症などの複雑な課題を解決するために、それまで細分化が進んでいた学問分野を再結集した統合的なアプローチが研究者に求められているだけでなく、産業界や政府・自治体、そして市民との連携も必要になっていることです。その中で、社会の様々なセクターで活躍できる次世代の人材育成も大学院に求められるようになっていることが、2つ目の理由です。いまや1万人を超える本学の卒業生は、研究者や教員としてだけでなく、多くの企業・多様な業種で活躍しています。

 そして3つ目の理由が、研究と教育の両方にまたがるグローバル化の必要性です。本学は、世界各国から教員や研究者を受け入れているだけでなく、現在、在学生の約4人にひとりは留学生です。多様な教員と学生が共に研究に取り組み、アイデアや成果を共有・議論しながら、実践的な英語力・コミュニケーション能力を磨く国際的な教育研究環境も奈良先端大の特徴となっています。

 さらなる進化を目指し、創設から30周年のマイルストーンを機に「先端科学技術で未来を共創する大学」を目指す『学長ビジョン2030』を策定し、公表しました。科学技術研究の最先端を追求し、その中で次世代のリーダーを育成するというミッションをとおして、奈良先端大は未来に貢献するため前進を続けます。


2024年4月1日
奈良先端科学技術大学院大学長 塩﨑 一裕