本日、奈良先端科学技術大学院大学の博士前期課程に入学された361名の皆さん、博士後期課程に入学・進学された67名の皆さん、そしてそのご家族の方々に、お祝いを申し上げます。We are also excited to welcome those who have decided to leave their home countries and joined us today. We are proud of the fact that you have chosen the Nara Institute of Science and Technology as a place for your graduate study.
 また、皆さんの新たなスタートをお祝いするためにお越しくださった、ご来賓の方々に心よりお礼を申し上げます。

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ観点から、この度の入学式は会場での参加人数を絞った上で、アカデミックチャンネル、およびインターネットでも配信するハイブリッド方式で開催しています。これまで本学では、学生・教職員の皆さんがマスク着用を含む基本的な感染症対策を心がけ、また、授業動画アーカイブシステムを含め、教育研究活動において様々な工夫を取り入れるとともに、本日のご来賓のお一人である小紫市長のご協力のもと、生駒市からのご支援でこのミレニアムホールでのワクチン接種も実施することができ、学内での感染を最小限にとどめることに成功してきました。

 本日、奈良先端大の一員となる皆さんにも、自分自身とこのコミュニティー全体を新型コロナウイルスから守り、活発な教育研究活動を継続するための取組みに是非、加わっていただきたいと思います。力を合わせることで、変わらぬ成果をあげていくことができるはずです。

 もちろん、このキャンパスの素晴らしさは、コロナ禍対応だけではありません。新たに奈良先端大に入学されたみなさんは、これからこのコミュニティの魅力を次々と発見し、実感していくことと思います。アメリカ、カリフォルニア大学で長らく教員を務めた後、本学に移ってきた私自身もそうでした。奈良先端大コミュニティの特徴の一つは多様性です。本日入学された新入生の皆さんの中には、世界17ヶ国・地域からの41名の留学生がおられ、奈良先端大に在籍する学生全体では約4人に一人が海外からの留学生という国際的なキャンパスとなっています。また、日本の大学院は、一般的に学内進学者が多いのに対し、本学にはさまざまな大学、学部や高等専門学校の卒業生、そして社会人が入学してきます。加えて、大学によっては、その卒業生が教員の大多数を占めている例もありますが、本学の教員の経歴は多彩です。

 多様な属性、知識、経験は、科学技術の研究に必須である発想の創造性と変化への柔軟性を生み出し、また、多様な人々と関わることで、私たちは自分自身のそれまでの価値観に囚われずに、自らの可能性を拡げることができるようになります。まさに奈良先端大のモットーである、"Outgrow your limits" 、つまり自らの限界を打ち破るということです。
 このような多様性の価値を本学の構成員が認識し、一人ひとりの違い・個性を尊重するコミュニティー文化を守り育てていくという理念を明文化した「共創コミュニティー宣言」を先頃、策定し、公表しています。皆さんも是非、全文を読んでみてください。

 この「共創コミュニティー宣言」の「共創」とは英語の "co-creation"の日本語訳で、共に創ると書きます。Co-creationは、ミシガン大学ビジネススクールの Prahalad教授およびRamaswamy教授が唱えた「様々なステークホルダーと協働して共に新たな価値を創造する」という概念を表しますが、私が昨年、学長就任時に発表した「学長ビジョン2030」でもキーワードとして掲げました。学生と教職員が課題やアイデアを共有し、共に議論し、力を合わせることで奈良先端大の教育研究と社会貢献というミッションを実現することを共創 =co-creationという言葉で表しています。この共創の推進力となるのが、奈良先端大コミュニティーの多様性なのです。

 さて、新入生のみなさんは、今後、それぞれ研究室に所属して、学位論文研究に取り組むことになります。つまり、みなさんは本学の学生であると同時に若手研究者でもあるわけです。最先端の科学技術研究では、世界でまだ誰も成し遂げていないことに取り組むわけですから、教授の先生方でさえ答えを持っているわけではありません。「教授」という言葉は、教え授けると書きますが、教授の先生方は皆さんに研究の答えを教え授けるのではなく、皆さんの共同研究者として、一緒に世界最先端の研究に取り組みます。教員と学生の共創=co-creationが研究であり、その中で、問題・課題の発見や解決に必要な多面的な知識とスキルを身につけるのが大学院でのトレーニングと言えるでしょう。トップレベルの研究者である本学の先生方が、皆さんとの新しい共同研究を始めることを楽しみにしています。

 最後に、もう一度、本学のモットーを繰り返します。
  "Outgrow your limits"
 皆さんには、自分ではまだ気づいていない大きな可能性が眠っていることを忘れないでください。自分で自分の限界を決めてはいけません。本学は、皆さんが自身の新たな可能性を発見し、それまで思い込んでいた自分の限界を超えて、成長することを可能にする場所なのです。

 ようこそ、奈良先端大へ。

令和4年4月5日
奈良先端科学技術大学院大学学長 塩﨑 一裕